『キミスイ』以上の感動作! 住野よる最新作は幸せを探す、小学生の女の子の不思議な物語

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/16

クッキーにのせたアイス。おもしろくてワクワクするような本。自然と口ずさんでしまう大好きな歌…。自分を幸せにしてくれるものを挙げるのは簡単だが、いざ「本当の幸せとは」と考えると、その答えは、難しい。大人になれば、誰でも幸せになれるような気がしていたが、人生そう簡単ではなさそう。日々、忙しく毎日を送っていると、自分が本当に幸せなのか、わからなくなってしまう。もっと良い道もあったのでは…? やり直したいことだってたくさんあって当然だ。

デビュー作『君の膵臓をたべたい』(双葉社)が35万部を超える大ベストセラーとなった住野よる氏の待望の最新作は、読む人すべてを幸せにする物語だ。その名も、『また、同じ夢を見ていた』。小学生の主人公・小柳奈ノ花が、いろんな「友だち」と関わり合いながら、「幸せ」とは何か、その答えを見つけていく。まるで童話のような不思議なこの物語には、自分の心の大切な部分を撫でられるような、優しさと温かさがある。この本を読めば、誰もが自らの子どもの頃を思い出すことだろう。そして、自分にとって、大切にしたいものとは何なのかも、思い出すに違いない。

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この作品の主人公は、とっても生意気な女の子だ。

「人生とは、素晴らしい映画みたいなものよ」
「どういう意味?」
「お菓子があれば、一人でも十分楽しめるってことよ」

口ぐせは、「人生とは」。生意気なことばかりいう優等生の女の子には、学校の友だちがひとりもいない。だが、学校以外には大切なお友だちがたくさんいる。ノートに物語を書き付けては、リストカットを繰り返す女子高生。表札に「アバズレ」と書かれている「季節を売る仕事をする」お姉さん。ひとり静かに余生を送るおばあさん…。毎日、大人たちと関わり合いながら、彼女は、幸せを探し求めて歩いている。

学校には、友だちはいないが、気になる存在はいる。大好きな本の話ができる人気者の荻原くん。隣の席の絵を描くのが得意だが、周りの子にからかわれてばかりの桐生くん。大人たちに、彼らのことを話しながら、彼女は次第に変わっていく。この物語に書かれた言葉が、次第に、まるで宝石のようにまばゆく、キラキラと輝いて見えてくることだろう。

誰かの味方になってあげられること。誰かを愛すること。ここにいていいのだと、言ってあげること。恵まれた私たちにとって幸せとは空気のようにそこにある存在で、なくなるまでその大切さに気がつけないもののように思える。だが、だからといって見過ごしていいものではない。自棄になって大切なものを傷つけたり、失ってしまったりする前に、自分が大切にしたいものは、しっかりと、自らの手で抱きしめていたい。

この本は、「やり直したい」ことがある、「今」がうまくいかないすべての人たちに読んでほしい物語。さぁ、自分の幸せと向き合ってみよう。悩み多き私たちを包み込むような温かさに、あなたもきっと癒されるに違いない。

文=アサトーミナミ

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