交通手段はほぼ「なし」! なかなか行けない“秘島”のガイドブック

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/16


『秘島図鑑』(清水浩史/河出書房新社)

島にはなぜかロマンを感じる。現在、やむことのない火山活動により成長し続ける西之島もそのひとつだ。2013年11月。同島の南東沖に新たな陸地が誕生して以来、未開の島への興味関心を寄せる声も少なくない。

さて、日本が島国であるというのは、この国に住んでいる人びとの誰もが知るところである。北海道、本州、四国、九州、沖縄では、人びとが毎日を過ごしている。しかし、その周辺にはたくさんの小さな島々が、浮かんでいるというのも事実だ。

日本に住んでいながら、行きたくても行けない島々。その中からえりすぐりの島々を集めた1冊の本がある。「本邦初の“行けない島”ガイドブック」をうたう書籍『秘島図鑑』(清水浩史/河出書房新社)だ。著者は同書のまえがきで、秘島の定義を以下のように語る。

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・リモート~遠く離れた~感がある(絶景の絶望感)
・孤島感がある(比較的小さな面積で、周囲に陸地や島がない)
・もの言いたげな佇まい(島の姿、形が個性的なもの)
・行けない。島へのアクセスが少ない(一般の公共交通機関がない)
・住民がいない(島に住所を有する人・住民票を置いている人がいない)
・知られざる歴史を秘めている(忘れてはいけない小さな島の物語)

無人島、絶海の孤島――。それだけではない。ガイドブックとうたっていながら、表記された「アクセス方法」のほとんどは「なし」。だからこそ想像力をかき立てられるわけだが、著者は1つひとつの島々を写真を交えて丁寧に解説するのに加えて、秘島のたしなみ方を伝授してくれる。

本籍を移してみる

行けないからこそ、身近に感じられる方法のひとつ。本籍は今どこで住んでいるかにかかわらず、特定の市町村に属している場所であれば日本中どこにでも置ける。住民票などの本籍地欄を見つめて、人知れずニヤリとしてみるのもまた一興。同書によれば、沖ノ鳥島や尖閣諸島、竹島などの上陸することすら難しい島々に本籍を置く人たちもいるという。

Google Earthでバーチャル上陸を試みる

PCやスマホから、目の前で小旅行を楽しめるGoogle Earth。もちろん秘島を巡るにもうってつけのツールである。例えば、八丈島の西方に浮かぶ八丈小島へ“上陸”してみると、1969年に全島民が離島するまでに使われていたと思われる集落への道を発見できたりと、島々の歴史とふれあえる。

浜辺の漂着物をチェックする

浜辺を歩くときに意識してみたいこと。海ではぜひ「下を向いて歩いてみよう」というのは著者である。妄想も交えた楽しみ方のひとつだが、例えば、絶海に浮かぶ孤島から見知らぬ誰かからの“SOS”が届いているかもしれない。いわゆるボトルメール、メッセージ・イン・ア・ボトルというものだ。

実際、1784年に難破船の乗組員だった“マツヤマ・チュウノスケ”からの木片に刻まれたメッセージが、150年後に彼の故郷である海辺の村に届いた事例もあるという。数年、数十年、数百年前からのメッセージを、第1発見者として受け取る可能性もありうる。

もし自分が住んでみたら。廃墟となるまでは、誰がどのような生活をしていたのか。アドレナリンを感じるほどに“妄想”をふくらませられるのも秘島ならではの楽しみである。島々を通して、ひいては「国境や海洋資源まで。日本の本質が見えてくる」と著者は話すが、ぜひとも、行きたくても行けない島々の話からそれぞれのロマンに浸ってもらいたい。

文=カネコシュウヘイ