将来的に危険!? 「いい子」は「親に都合のいい子ども像」を押し付けられてるだけ!【男の子育てが「わからない」と悩むママ必読】

出産・子育て

更新日:2016/4/6


『育てにくい男の子 ママのせいではありません』(おおたとしまさ/主婦の友社)

 じっとしているのが大嫌いで、目を離せば行方不明。やめなさいといっても聞く耳を持たず、気がつけば誰かと小競り合い。一日中注意ばかりで疲労困憊した深夜、ふと見渡せば部屋はぐちゃぐちゃ……「なにこの怪獣!」と、小さな男の子を持つ母親は、一度は思ったことがあるだろう。どんなに愛しい息子であっても、女である母親にとって男は男。思わず「なんで、そうなるの?」と呆れるほどのバカ、いや、不条理っぷりに憤ることしばしば。

 「まぁ、それが子育てってものだから」なんておおらかなことをいっていられるうちはいいが、いまどきは社会のルールからちょっとはみ出すだけで厄介者扱いされかねない。結果、お母さんはちょっとびくびくして「もしかして、ウチの子ってどっかおかしいの?」「私の子育てに問題があるの?」と、悩んでいたりもする。だけど、ちょっと待って。あなたのお子さんは、ものすごい可能性を秘めているのかもしれないのだ。

 育児・教育ジャーナリストとして活躍するおおたとしまさ氏は、その著書『育てにくい男の子 ママのせいではありません』(主婦の友社)の中で「一般には“困ったちゃん”と言われるわんぱく坊主ややんちゃ坊主は、むしろ生きる力にあふれた存在」と断言する。おおた氏によれば、一般に「いい子」は、「親に都合のいい子ども像」を押し付けられ、本当の自分を表に出せない、いわば「不自然な子」。親の期待に合わせて見せる表向きの姿と、本当の自分の間に大きな乖離が生じて、思春期以降に爆発することがあるという。いま の時代は、こうした「いい子」がよいとされる傾向にあり、そうした圧力で生きる意欲や意志を感じさせない去勢されたような男の子が増えている「男の子問題」という社会問題も起こっており、実際、男子の草食化というのもこうした現象と地続きといえるのだろう。

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 そんな時代において、「わんぱくでやんちゃな男の子らしい男の子はもはや絶滅危惧種。むしろ大事にすべき存在であり、長所を伸ばして“しつけ”をすれば、将来有望」というのだから、これは心強い!

 たとえば、以下で「育てにくい男の子」度をチェックしてみよう。

● 雨の日は大変。家でじっとしてるのが嫌い
● スーパーなどで気づくと、姿が見えなくなる
● 椅子、テーブル、塀…など高いところに登りたがる
● 何でも「自分でやってみたい!」
● ダンゴムシ、アリ、ミミズなどママがうれしくない虫を捕まえてくる
● 靴がすぐにドロドロ、ボロボロになる
● メガネ、時計、スマホなどを壊した前科がある
● 「うんち、おしっこ、アホ、バカ…」そんな言葉をよくつかう
● 「これはしちゃだめよ」と言ったことに限ってする
● 「イヤだ!」と言い出すと、もうテコでも動かなくなることがある
● 友だちとのケンカについて、保育園や幼稚園からよく報告を受ける

 あてはまればあてはまるほど普通は「困ったちゃん度」があがって落ち込みそうだが、さにあらず。「育てにくい男の子」であるほど、将来有望と考えるならば、むしろスコアは高いほうがいい(ちなみに、あてはまった数が3つ以上なら、「育てにくい男の子」の素質、十分あり。5つ以上ならなかなか骨のある「育てにくい男の子」、7つ以上なら将来有望な選ばれし「育てにくい男の子」とのことだ)。

 本書ではこうした「育てにくい男の子」とどう接すればいいのか、いたずらの対処法からケンカの仲裁法、ルールの教え方までさまざまに伝授してくれる。いずれも大人の価値観を押し付けることなく、大きな心で受け止めてみれば、きっと子どもの新しい面が見え てくることだろう。ただ正直なところ、「おおらか子育て論」はこれまでにもなかったわけではない。実は問題はそれをストレスに感じてしまうお母さん自身のマインドと、周囲の理解のなさにもあったりする。本書のうれしいところは、そうしたお母さんの気持ちにもしっかり寄り添っていることだろう。怒りすぎたら素直に子ども に謝る、時にはしつけをあきらめる(はっきり言ってもらえると勇気百倍)、わかりあえる人間関係を作るなど、自分自身の心のコントロールで変えていける方法が具体的に指摘されているのはとても参考になるはずだ。

 ちなみに、すでに思春期の息子を持つ私には、著者のラストの言葉「始まったばかりなのに結構残り少ない子育てライフをたくましく歩んでくださることを、心よりお祈りいたします」の言葉がしみた。気がつけば、本当に子育てなんてあっという間。やんちゃな男子は発見の連続で笑えるし、苦しめられた思い出なんて忘れてしまう。母たちよ、いまを楽しまないともったいない!

文=荒井理恵