『野蛮な読書』平松洋子 「読書は五感全部に影響をおよぼす」

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/27

「食」にまつわる上質なエッセイを上梓してきた平松洋子さんが今回俎上に載せたのは「本」。といっても『野蛮な読書』(集英社)とはよく言ったもので、お堅い書評とはひと味違う一冊に。

「本を読む読み方って、人それぞれ、いろいろあると思うんです。頭で解読していくように読むのもひとつの愉しみ方だと思うんですけど、私にとって読書は五感全部に影響をおよぼすような深いものなので。それを言葉にすると何かなと考えた時に〈野蛮〉という言葉がくっきり浮かんだんですね。書きながら、私自身、タイトルに導かれるところがあったと思います」

とりあげた本は実に103冊。どうやらこの人は本についても相当な健啖家だったらしい。

開高健の『戦場の博物誌』なら、いつもよる喫茶店ではなく、雑としたハンバーガーショップで読みたくなる。伊豆で断食をしながら読んだのは正岡子規の『墨汁一滴』。食べたくても食べられない1週間、病床にあっても食べることに執着した子規ににじり寄る……。

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読書と日常が互いにシンクロしあうような語り口が新鮮だ。

「日常の中のリアルな読書、普段みんな意識してないけれど、こういうことあるよねってことをまず書きたかったんですよ。たとえばある本を読んでいると、また別の本が読みたくなるってありますよね。本が本を連れてきて、手引きをして、掘り下げてくれる。その時の思いもかけない連なり方に、どうして私はこれを読みたくなったんだろうと驚いて、自分自身を発見することもあると思うんです」

(ダ・ヴィンチ12月号「こんげつのブックマーク『野蛮な読書』平松洋子」より)