仕事だけじゃない! 人付き合いにPDCAを取り入れてみたら…

人間関係

公開日:2016/3/7


『シンプル思考/人生の9割はPDCAでうまくいく』(井上裕之/ぱる出版)

 仕事の進め方の基本ともいわれるPDCA。P=PLAN(計画)、D=DO(実行)、C=CHECK(評価)、A=ACT(改善)というサイクルを繰り返しながら、業務を改善したり、マネジメントを行ったりするという理論だ。そのため、PDCAはビジネスシーンで使用されるものという印象が強い。

 しかし、PDCAとは、あくまでもシンプルな思考法。ビジネスにしか使わないなんてもったいような気もする。そこで、『シンプル思考/人生の9割はPDCAでうまくいく』(井上裕之/ぱる出版)では、PDCAを私生活でも取り入れることを提案している。

 例えば人間関係で悩んでいる場合。社会人として働いていく以上、性格が合わない人や、苦手な人とも、ある程度付き合っていくことが必要になる。そこで本書では、PDCAを取り入れて苦手な上司に対処していく方法を、3段階で提案している。

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 著者によると、最初の段階では、上司の価値観がどこにあるのかを把握することが大切だそう。相性が悪くても、相手から好かれれば必要以上のストレスを抱えずに、自分で上司との距離をコントロールすることも可能になる。

 次に、マイナスの側面の背後にあるものを見極める。上司の行動だけを見るのではなく、背後にある意図やミッションを捉えるようにすれば、行動を冷静に判断できるようになるのだ。この最初の2つの段階を進めるには、上司のPDCAを客観的に把握することが必須だそう。

 最後の段階では、上司の上司や経営層が、その上司をどう評価しているかを知ることが大切だ。そして、良い評価を受けている部分は、自分のPDCAに取り入れてみよう。そうすれば、苦手な上司に長所が見つかり、結果として自分にプラスになるかもしれない。本書では、上司を例に挙げているが、プライベートの人間関係でも十分応用可能だろう。

 では、PDCAを活用して恋人はできるのか。著者によると、答えはイエス。まず、どんな恋人がほしいのかを明確にする(P)。理想で構わないので、思い浮かぶものをメモしてみよう。次に、その恋人像に近い人が集まりそうな場所に足を運ぶ(D)。そうすることで、素敵な出会いにつながる可能性が上がるのだ。

 しかし、だからといってすぐに恋人ができるとは限らない。そこで大切なのは、その場所が適切だったのか、自分の行動が相手にどう映っていたのか、を振り返ること(C)。そのうえで、出会いの場の改善を試みる(A)。本書では、周囲に好みを伝えることで、アドバイスをもらえたり、出会いの場を紹介してもらえたりして、改善に役立つと指摘されている。もしかすると、恋人が絶えない人は、このPDCAを無意識に実行しているのかもしれない。

 恋人と順調な付き合いをしていくと、結婚という文字がチラつき始めるかもしれない。しかし、そこでPDCAをそのまま使うには、少々リスクがあるようだ。Dの実行=結婚する(婚姻届を出す)ということになるので、後戻りできなくなってしまうからだ。そこで、著者はDをシミュレーションに置き換えることを提案。結婚生活のプランを立てて、シミュレーションを行い、評価や分析、改善をしたうえで、最後に実行に移すというわけだ。

 他にも、本書ではお金に困った場合、自己管理が苦手な場合など、私生活で遭遇する様々な状況でのPDCAの活用方法を紹介している。著者の言葉を借りれば、PDCAは「思考法の断捨離」。余計なことに時間を費やしてストレスを抱えることなく、目標に向かってシンプルに考えることで、仕事もプライベートも、人生そのものさえも良い軌道に乗せられるかもしれない。論理的に考えるのが得意でない方や、日々の仕事や私生活でストレスを抱えている方は、本書を参考にして、少しずつ現状を改善してみてはどうだろうか。

文=松澤友子