4月までにおさえたい! 教養ある社会人だと思われる「大和言葉」の使い方【したためる・箸にも棒にも掛からない】

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/15

ぱらぱらめくって読むだけで、きれいな日本語がカンタンに身についてしまう。身近な例文に、かわいいイラストつき。とにかく楽しい一冊『大和言葉つかいかた図鑑』(海野凪子:著、ニシワキタダシ:イラスト/誠文堂新光社)を紹介しよう。

例文担当の海野氏は外国人に日本語を教えている。ベストセラー『日本人の知らない日本語』(KADOKAWA)の著者でもある。例文には簡潔な解説もついており、わかりやすい。膝をうつトリビアが隠れていることもある。探すのも楽しいのでおすすめ。ニシワキ氏はベストセラー『かんさい絵ことば辞典』著者で、最近はLINEスタンプでも人気のイラストレーター。ほんわかとした素朴な画風が本書にぴったりマッチしている。

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その上、例文はシチュエーション別にならんでいる。【あいさつ】【人づきあい】【しごと】【すがたかたち】【ようす】【たち】【評価】【程度】【きもち】【まちあるき】である。いざという時に使えるのでかなり便利。巻末には、例文で取り上げた「大和言葉」の索引もあり使い勝手がいい。

さっそく、【あいさつ】の中から「久しぶりにメールではなく手紙をしたためてみます」の例文ページを開いてみよう。解説には

「手紙をしたためる」と言うと…ちょっと古風ですが、ゆったりとした雰囲気を持つ言葉ですね

とあり、“手紙を読む人”のイラストが添えられる。その構図がユニークで見ているだけで思わず和んでしまう。

つぎに【評価】の中から「若いころは、箸にも棒にもからない人だったけど、結婚したら落ち着いたね」の例文ページを開いてみよう。すると、OL風の女性が「もうぐうたらで、一日あくびか毛玉とりしかしてない日もざらだったって」と言っている。ここでもほほ笑むイラストが目に入ってくる。解説には、

「はしにもぼうにもかからない」とは、
「ひどすぎてどうにもならない」という意味です。箸でも棒でもひっかけることができない、掬(すく)えない、つまり「救いようがない」とひっかけているのかなあと思います

に続いて、

そういう説は見かけませんでしたが

との、海野氏のユーモアあふれるつぶやきもある。

そもそも「大和言葉」とは、日本古来のことば。他の国から言葉が入ってくる前から使っていたことばで、不思議とやさしい響きを持つのが特徴。奥ゆかしくて、聞いている相手にもやわらかな印象になる。使ってみると、日常がちょっと豊かな気分になる。堅い文章のメールをもらうより、変化があり、文章がぐっと印象的になる。心が伝わるような感じがしないだろうか? 「大和言葉」は、SNSが普及し、文章をメールで書く機会が増えた若い人には新鮮に映り、手書きの丁寧な文面に慣れている年配の方にはなつかしく映るのではないだろうか。

後世に「生きた日本語」を残すためにも役立つはず。まずは本書で「大和言葉」の使いかたを知り、実際に使ってみるのはどうだろうか。日常生活がちょっと楽しくなることうけあいである。

文=塩谷郁子