日本の女帝に学ぶ! 女性が組織を管理するとき「大切なこと」

社会

公開日:2016/3/12


『女帝のいた時代』(つげのり子/自由国民社)

 最近の人気アイドルグループの解散騒動で、敏腕女性マネージャーの存在が大きく取り上げられた。彼女の動向がメンバーに大きく影響した結果が今回の騒動の原因と言われている。また、アイドルグループの所属事務所の副社長も女性。その言動に対しても、さまざまな批評が飛び交った。ちなみに同性の私も中間管理職についていた経験があるが、上からも下からも攻撃を受けているような苦しさを記憶している。

 女性が組織を管理することには、どのような難しさがあるのだろうか。キャリアアップを重ねて来た場合も、運命的にその職務に携わることになった場合でも、向き合わなければならない苦悩は同じだろう。

女帝のいた時代』(つげのり子/自由国民社)は、日本の歴代天皇125代のうちわずか8人だけ存在する女帝(=女性天皇)にスポットをあて、彼女達のそれぞれの生き方を描いた書籍だ。皇族に生まれた運命を背負い、現代よりもはるかに血なまぐさい権力争いの中心にいながら、彼女達はどのように現実と向き合ったのか。男性が行うものだった政の運営上、形式的に座らざるを得なかった女帝のポジション。それを利用して、自らの望む方向へ必死に舵を取った彼女達の底力を見ることができる。

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 日本の歴史上最初の女帝となった、推古天皇。その裏には、大和朝廷の中で絶大な権力を握っていた蘇我馬子の策略がある。次期天皇となるべき周囲の男性が相次いでこの世を去り(馬子の陰謀とも考えられる)、空席となった天皇のポジションに無力な「女性」を据えることは、馬子にとってこの上ない好都合だったのだ。しかし、推古天皇は黙って馬子の言いなりにはならない。天皇の独自性を守るため、思うまま権力を振るう馬子の力を少しずつ削いでいく計画を静かに開始する。その計画とは――。

 運命に流されるのではなく、問題と正面から向き合い、分析し、論理的な解決を試みる冷静さと柔軟さ。彼女は、能力を買われたわけでもキャリアを積み重ねたわけでもない、ごく普通の女性だったはずだ。そのひとりの女性が、国をも治める器量と粘り強さを発揮する。御し易し、とあなどった男性はとんでもないしっぺ返しを食らうことになる。

 この本に記された8人の女帝は、それぞれのキャラクターを反映させながら、政の困難に逞しく立ち向かっている。夫の天武天皇を支え、的確な助言や行動力で政界を仕切った女傑、持統天皇。しかしその一方では、家族と過ごした穏やかな時間を懐かしむ、愛情豊かな女性だったという。生涯独身を貫くべき身でありながら、有能な部下と熱い愛情を交わしていたことをうかがわせる美貌の女帝、元正天皇。自分の病を癒した僧・弓削道鏡に心服し、自分に逆らう者をヒステリックに排除した「メンヘラ」、孝謙天皇。大正天皇から今上天皇へとつながる皇統の祖・光格天皇を幼少期から養育し、私欲を持たず民に恵みを与えることを教えた「国母」、後桜町天皇――。そこには、自分自身の女性としての欲求と、政権の長という責任の間で苦悩しながら全力で生きる生身の女性達の姿がある。

 歴史資料のような堅苦しさはなく、現代女性の生活スタイルや志向にも触れつつ話が進む軽やかさが本書の大きな魅力だ。女性が組織をマネジメントしていく際に役立つ成功例や失敗例、そこから学ぶべき大切なヒントがたくさんちりばめられている。

 女性が、女性ならではの魅力をフルに活かしながら組織全体の利益を追求するには、何が大切なのだろうか?―― 女性が自分のガバナンス能力を引き出すために何をするべきか、さまざまな方向から考えさせてくれる一冊だ。

文=あおい