『このマンガがすごい!』第4位! 先生と生徒の秘密の恋……でも、ちょっと変? pixivでも人気のラブコメ短編集

マンガ

公開日:2016/3/17


『塩田先生と雨井ちゃん』(なかとかくみこ/イースト・プレス)

 先生と生徒の秘密の恋。時代を超え、いつでも誰でもときめきを覚えるジャンルの一つではないだろうか。学校では恋人同士であることは内緒。授業中に、はたと目が合って、二人だけの秘密の合図で愛を伝える。休日は人目を気にしながらのデート。

 先生と生徒の恋愛模様には、恥ずかしくなるようなドキドキが詰まっているのだ。

 しかし、『塩田先生と雨井ちゃん』(なかとかくみこ/イースト・プレス)は、そんなドキドキラブロマンスとはちょっと違う学園生活を送っている。

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『このマンガがすごい! 2016オンナ編』の第4位に選ばれた本書は、 pixivで連載されていた人気作。古文・現代文を担当する教師の塩田先生(29)と、品行方正で真面目だが、塩田先生を好き過ぎてちょっとおかしい雨井ちゃん(16)のラブコメディである。

 塩田先生は、顔はいいのに見た目に無頓着で、ボサボサ頭の冴えないメガネ。

 雨井ちゃんはそんな塩田先生に悪い虫がつかないよう、「ハゲデブ作戦」を敢行する。すなわち、先生を「ハゲで、デブにさせよう」と、無理矢理髪の毛を抜こうとしたり、太りそうな食べ物を食べさせて体重を増やさせようとしたりする。

 もちろん塩田先生は止めさせようとするが、雨井ちゃんは納得していないようだ。「先生のせいで私、ちょっぴりおかしくなっちゃったんです」とにっこり。

「いつかこいつに殺されるんじゃないか」と塩田先生は引きながらも、「それも悪くない」とまさかのデレを見せる。雨井ちゃんが塩田先生のことが大好きな描写は猟奇的なくらいに、これでもかと描かれるのだが、塩田先生は常にローテンションなため、実際雨井ちゃんへの気持ちがどれほどなのか、分からない節がある。

 しかし、塩田先生のさりげない言動から、先生もどっぷりと雨井ちゃんに愛情を寄せていることが分かる瞬間が、胸キュンポイントだ。

 ところが、積極的な雨井ちゃんは、変なところで恥ずかしがり屋でもある。

「クリスマスイヴを朝までずっと一緒に過ごしたい」と言おうとして「すごろくしたい!」と叫んでしまう。雨井ちゃんは「24日までに全世界のすごろくが消滅しますように」と願うが、叶うわけもなく、イヴはすごろく大会に(結局雨井ちゃんは楽しんでいる)。

 しかし塩田先生に「もう16時だから帰れ」と言われてしまう。どうやら遅くなる前に帰るというのが、二人の間の約束らしい。ここで読者は「二人は午後の4時には別れるような関係なのか!」と清く正しい関係にニヤニヤ。大人として、まだ16歳の雨井ちゃんを気遣っている塩田先生の思いがけない真摯さにもときめいてしまうのだ。

 雨井ちゃんは大人な話題がとても苦手らしく、テレビでラブシーンなどが映ると固まってしまうような女の子。塩田先生が面白がって「寝室に行くか?」と誘っても「ピキーン」と音を立てて硬直してしまう。いつもは積極的な雨井ちゃんの思わぬウブなところと、そんな雨井ちゃんを大切に想い、「大人になるまでは」と手を出さない塩田先生。二人の関係には萌えが詰まっているが、変ないやらしさがない。

 バレンタインデーには、雨井ちゃんはチョコを口移しであげようとするが、結局恥ずかしがってできず、(色々あって)塩田先生との追いかけっこになってしまうし、海に出かけてもまるで父親と娘のように遊び戯れる二人。「お姫さま抱っこをしてください」という雨井ちゃんの要望に、塩田先生は雨井ちゃんを小脇に抱きかかえる。

 雨井ちゃんは「なんか違う」と訴えるが、「お前がお姫様なんだから、どうやって抱いてもお姫様抱っこだろ」と塩田先生。

 こんなさりげないお姫様扱い、雨井ちゃんでなくても照れてしまう。

 コメディ要素も満載。どこか昭和っぽさを感じる絵柄も相まって、さわやかに先生と生徒の恋愛模様が読めるのは、この漫画だけの醍醐味かもしれない!!

文=雨野裾