夢は「芥川賞作家」、趣味は「因数分解」 高校球児の選手名鑑、その意外な中身【センバツ開幕】

スポーツ

更新日:2016/3/19


『週刊ベースボール別冊春季号 第88回選抜高校野球大会完全ガイド』(ベースボールマガジン社)

 春の訪れを告げるセンバツ高校野球。今年も3月20日(日)に開幕予定です。

 ここ5年で春1回、夏2回優勝と黄金時代に入っている大阪桐蔭(大阪)、「秋の甲子園」こと昨秋の明治神宮大会を制した高松商(香川)。その高松商を県大会で破った21世紀枠・小豆島(香川)などなど、強豪から話題校まで全32校が優勝を目指して熱い戦いを繰り広げることでしょう。

 ところで、センバツと夏の甲子園の違いはいくつかありますが、その一つは出場決定から大会までの期間が長いこと。地方大会終了後、1週間足らずで全国大会が始まる夏と違い、センバツは1月末の出場決定から大会まで約2カ月もあります。そのため、夏に比べ選手名鑑雑誌も詳細なものが揃います。ファンはチーム、選手の事前情報をより詳しく知って観戦に臨めるわけです。

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 というわけで、センバツ出場チームの選手名鑑を読み込んでみると、なかにはユニークな回答をしている選手もいたりして、思わずどんな選手か気になったり、いつのまにか応援したくなったりして、プロ注目の選手、チーム、優勝争いといった視点とは別の楽しみも生まれたりもします。

 なかでも筆者が特に注目しているのが「好きな言葉」。理由は、その選手の人間性、キャラクター、思考やバックグラウンドが垣間見えるから(多分に妄想も含まれるが)。たとえばプロ注目の投手の場合だと下記のような感じです。出典はすべて『週刊ベースボール別冊春季号 第88回選抜高校野球大会完全ガイド』(ベースボールマガジン社)。

高山優希投手(大阪桐蔭)「迷わず一球を投げる」
藤島健人投手(東邦)「一生懸命」
鈴木昭汰投手(常総学院)「ナンバー1」
高田萌生投手(創志学園)「初心」

 いずれもトップを目指す選手にふさわしい、ダメな大人としては思わず頭を垂れてしまういい言葉ばかり。しかし、広く見渡すとこんな言葉を挙げる選手もいたりします。

益田海成外野手(日南学園)「帰省」

 うん、わかるわかる。帰省、楽しいよね。きっと親元を離れ、日々、厳しい合宿生活を送っているのでしょう(よく見るとそんなに遠いところ出身ではなかったけど)。ちなみに過去「今日は練習休み」を好きな言葉に挙げていた猛者がいたことも付記しておきます。

吉安雄飛内野手(秀岳館)「腹が減っては戦ができぬ」

 182cm 100kgの選手でした。

大林和生外野手(花咲徳栄)「人生ギャグ」

 ある意味、哲学的。

吉川勝太内野手(土佐)「攻めの文系 攻めの地学」

 もはやよく意味がわかりません。

 などなど、味のある回答をしてくれる選手たちは俄然、注目したくなるのです。

 近年では2013年のセンバツに出場した大阪桐蔭の控え捕手・横井佑弥選手もそうでした。好きな言葉は「技術低下に女あり」。当時、横井選手は2年生。16歳でこんな言葉を挙げられるところに大阪桐蔭の層の厚さ、懐の深さを感じたものです。横井選手は現在、國學院大学の硬式野球部に所属。将来は是非プロ入りしてほしいです。

 そして「好きな言葉」以外にも、

上原虎太捕手(東邦)特技「『チャーリーとチョコレート工場』のセリフを覚えること」
井上拓内野手(土佐)趣味「因数分解」
山下直樹内野手(敦賀気比)趣味「趣味を探すこと」

 といった具合に思わず取材をしたくなるようなユニーク回答がチラホラ。このように選手名鑑があればテレビ観戦も1.2倍くらいは楽しくなること請け合い! みなさんも是非、一度目を通してみてください。

 ちなみに「ダ・ヴィンチニュース」として、最大の声援を送りたい選手は仲野凛平内野手(南陽工)。将来の夢は「芥川賞作家」とのこと。いつか授賞式会場で再会しましょう!

文=長谷川一秀