恋愛&婚活は戦いである ―勝ちたい女性たちよ、孫子、武蔵、官兵衛……天才たちの兵法を手にせよ!

恋愛・結婚

公開日:2016/3/23


『女子の兵法』(佐伯紅緒/セブン&アイ出版)

「婚活に勝つ」「勝負下着」「負け犬」……とかく男女の恋の駆け引きや婚活は、勝ち・負けがある“戦いの場”として語られます。けど、そのわりには恋愛指南本の多くはピンクベースの装丁でふっわふわのゆっるゆる。女性の、女性による、女性のための内輪ウケ的世界観に終始しているように見えます。これでは女子会の恋愛トークでは盛り上がっても、男性相手には通用するわけがない。必要なのは、戦いに勝つための理念と方法論、すなわち“兵法”である、と教えてくれる異色の指南本が、『女子の兵法』(佐伯紅緒/セブン&アイ出版)です。

 兵法といえば、孫子。紀元前6世紀に書かれた『孫子』はさまざまに解釈され、いまでも多くのビジネスマンが経営戦略などをそこから読み取っています。また、人気コミック『キングダム』(原泰久/集英社)にも戦いのたびにいくつもの兵法が登場しますが、孫子の兵法が下敷きとなっているものも多いといいます。

 世紀を超えて人々に多くのこと示唆し、絶大な信頼を寄せられるこの「孫氏の兵法」をはじめ、本書には同じく中国の『兵法三十六計』、宮本武蔵『五輪書』、軍師・黒田官兵衛が遺した言葉、さらにはナポレオンから現代のサムライ・イチローの名言までズラリ70篇! これを恋愛に活かすとどうなるのでしょう?

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 たとえば、「善く兵を用いる者は、その鋭気を避けてその惰帰を待つ」(孫子)。「戦いに長けた者は、相手の士気が高いときは避け、弱ったときに攻める」を意味しますが、本書では憧れのミュージシャンとの距離を徐々に詰めつつも決め手は打たず、彼の心に隙ができたときに一気に行動を起こし、既成事実をつくってデキ婚に持ち込んだ女性を例にあげています。

 兵法三十六計の「以逸待労」(いいつたいろう=果報は寝て待て)、釣りでいう「落ち鮎狙い」にも通じるこの兵法、「あざとい」とネガティブにとらえる人もいるかもしれません。しかし、いかなる策略もすべては勝つためにあります。手段を選ばない? いいじゃありませんか、これらは「自分自身を守る」ためでもあるのです。

 徒手空拳で恋愛市場に乗り込むのは、あまりに無謀。ふり回され、傷つけられ、疲れきってボロボロの落伍者となるのがオチです。失恋は人生の糧になるといいますが、それでも全人格を否定された気になるほどの惨敗は避けたいもの。そのために、先手を打ったり根回ししたり、騙しあったり罠を張ったりするのです。戦いにおいて、攻撃は最大の防御。賢い女性はそれを知っています。

 もうひとつ兵法を紹介しましょう。「智将は務めて敵に食(は)む」(孫氏)は、「すぐれた将軍は遠征のとき、敵地での食料調達を考える」を意味し、ここでは、ふだんは派手めの夜遊び大好き系女性が、はじめて訪れた彼の家で残り物などを上手に使ってサササッと手料理をふるまい、彼のハートをとらえたエピソードを当てはめています。

「男の胃袋をつかめ」とは、古典的かつコンサバティブな恋愛テク。なるほど本書には、こうした王道をいくアドバイスも少なくありません。けど、そういうものってすぐに忘れませんか? 基本中の基本テクほど、「あー、はいはい。いわれなくても知ってるし」と心を素通りしてしまいます。しかし古代の兵法家の言葉となると、同じ内容でもずっしり響くのです。試しに、「勝負服っていっても場所によって何がウケるかは違うから、そのときどきで変えなきゃね!」ではなく、「兵に常勢なく、水に常形なし」と厳かにつぶやいてみてください。だんだんと肝がすわり、相手にふり回されたり付け入られたりすることなく、自分主体の恋愛ができそうな気がしてきます。

 忘れてはいけないのは、古の兵法家やサムライたちは、敵に最大のリスペクトを払っていること。あなどらず、見くびらず、尊敬するがゆえに、こちらも頭脳を駆使して相対する、そんな精神が恋愛にも求められているということでしょう。

文=三浦ゆえ