海外ドラマはなぜハマる? 一晩中見続けてしまう中毒性の理由

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公開日:2016/3/25


『人気海外ドラマの法則21—どうして毎晩見続けてしまうのか?』(ニール・ランド:著、シカ・マッケンジー:訳/フィルムアート社)

「見過ぎて寝不足になった!」「一度、見たら止まらない!」など、中毒者続出の海外ドラマ。もちろん日本のドラマにも中毒性のある作品も存在するが、寝不足になるまで見続けたという話はあまり聞かないような気がする。やはり海外ドラマには、日本のドラマとは違った人を惹きつける魅力があるのだろう。

人気海外ドラマの法則21—どうして毎晩見続けてしまうのか?』(ニール・ランド:著、シカ・マッケンジー:訳/フィルムアート社)では、人気海外ドラマの製作において重要なことについて『LOST』や『ブレイキング・バッド』などアメリカで活躍するショーランナーに話を聞いている。

 日本では聞き慣れないショーランナーだが、映画でいえば監督のようなもの。本書によると「複数の脚本家たちで構成されるチームのまとめ役であり、製作総指揮として君臨し、発案者であるクリエイターとしてクレジットされることも多い」という存在だ。アメリカの海外ドラマは日本のドラマとは違い脚本作りもチームで行うため、まとめ役が必要だ。また、その後の製作においても一番上の立場になり、あらゆる作業の指揮をとる。

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 ショーランナーとして仕事をするにはまず企画を通さなければならない。

 ピッチと呼ばれる企画のプレゼンテーションをTV局各社に行い、買い手が決まっていない状態で書かれた脚本「スペック」を作成し、シリーズ第1話の「パイロット版」を作り、「パイロット版」の視聴率や評判次第でようやく放映が決定する。

 企画の売り込みの厳しさについて『ゴースト~天国のささやき』のショーランナーを務めたイアン・サンダーは本書の中でこう語る。

「一般的なドラマだと各社は7月から9月の間に300件から500件のピッチを受けるんだ。(中略)その中から脚本の発注を受けるのが50~75件。その中からパイロット版が制作されるのが10件~12件。シリーズ化されるのは3、4件。シーズン2に継続するのはその中の1、2件だよ」

 また、このピッチにはJ.J.エイブラムスのような大物も参加するというのだからレベルの高さもうかがい知れる。シリーズ化までたどりつくのは限りなく狭き門だ。選び抜かれた一作しか生き残らないシステムが良質な海外ドラマを生み出す理由の一つと言えるのではないだろうか。

 本書によると、人気シリーズとなっても視聴率次第で局の意向が変わってしまったり、ユーザーのネットでの反応を見て内容を変えたりと変動的であり、最初の構想通りにいかないことも多いという。また、人物が危機や驚きに遭遇したところで物語を中断するクリフハンガーにも力を入れていることがよくわかる。これも、中毒性の理由であろう。

 ただ見るだけではわからない海外ドラマの裏側がわかる本書。一度でも海外ドラマにはまったことがあるならば、ぜひ手にとってほしい一冊だ。

文=舟崎泉美