なんだか男心をくすぐる、「女性運転手」たち。バス会社で働く女の子たちを描いた、バスマンガがおもしろい!

マンガ

公開日:2016/4/6


『働く!バス娘(ガール)』(犬吠あか太/主婦の友社)

 一昔前まで、「運転手」という職業に就くのは圧倒的に男性が多かったように思う。電車、タクシー、バス……。普段利用する公共交通機関では、制服に身を包んだ男性がハンドルを握っていたものだ。けれど最近では、女性ドライバーの活躍が目立ってきたように感じる。つい先日乗ったバスの運転手も女性だった。大きなハンドルを見事にさばきながらも、降車する人に「気をつけていってらっしゃい」と声をかける姿が、とても印象的だった。……運転する女性って、なんだかすごく良い! そう感じてしまうのは、僕だけではないだろう。

 このたび登場した『働く!バス娘(ガール)』(犬吠あか太/主婦の友社)は、「かもめ交通」というバス会社を舞台にしたマンガ。そして、本作の主人公は、バスの女性ドライバーなのだ!

 保育園の送迎バス運転手に憧れて、路線バス会社で働く水郷あやめ。ちょっと天然でほんわかした雰囲気を持つ彼女は、「バスガイド」と勘違いされがち。だが、大型二種の免許取得に一発で合格する実力の持ち主で、正真正銘のドライバーだ。

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 あやめの「バス愛」は相当なもの。エンジン音を聞くだけで車種を判別でき、古くてオンボロなバスを見ては、「廃車になるまで、第2の人生をめいっぱい楽しんでほしい」と切に願う。……ああ、バスになってあやめに愛でてもらいたい。

 そんな彼女を取り巻く面々も、個性的でかわいい子たちばかり。人見知りで注目されるのが苦手な新人バスガイド・筑紫みお、クールで無表情だが隠れ巨乳のドライバー・刑部カオル、ライバル会社「イヌマキバス」に所属する高飛車な運転手・松本おとめ……。ドジっ子、クール系、お嬢様と、まさに萌えのパラダイスだ。

 しかし、だからといって本作は、ただの萌えマンガではない。「バスマニア」である著者・犬吠さんならではの細かい設定が散りばめられており、バスの知識がない者が読めば、「へぇ~」「なるほど」とハラオチするネタが満載なのだ。

 たとえば、あやめが唐突に誕生日を祝い始めた、9月20日。同僚たちがみな、「誰の誕生日だろう?」とヒソヒソする中、あやめはこう答える。「9月20日はバスの日!バスのお誕生日じゃない!」。厳密にいうと、1903年のこの日、初めて乗合バスが走ったんだとか。へぇ~。

 また、バスの忘れ物の行方について。財布やケータイ、傘などは、一週間ほど営業所に保管され、その後、警察へ拾得物として預けられるという。では、長期保存ができない食べ物の場合は? あやめ曰く、「私のお腹で保管しようかな……」とのことだが、もちろんこれは業務上横領。賞味期限次第だが、こういったものもしっかりと届けられる。へぇ~。

 その他、ドライバーのシフト表のことを「交番」と呼ぶことや、高速バスの乗車人数は数取器でチェックされていること、運賃箱によっては10円以下の硬貨も使えることなど、一般的になかなか知り得ないバス知識がたくさん詰まっている。

 本作は、マンガ投稿サイト「コミカワ」に投稿された作品の中から、初めてコミックス化されたもの。サイトオープン時から断トツの人気を誇るらしいが、それは読めば納得できるはず。萌え、笑い、お色気、トリビアがほどよくミックスされており、非常に読み応えのある仕上がりになっているのだ。

 身近な乗り物のひとつ、バス。そこで生きる女の子たちを描いた本作を通して、知っているようで知らなかった世界を覗いてみてはいかがだろうか? ……それにしても、運転する女性って、やっぱりすごく良い!

文=五十嵐 大