【2016年アニメ化】累計250万部突破の、文豪異能力バトルアクションの魅力とは?

マンガ

公開日:2016/4/6

 生まれて、すいません。人間失格の自分だから、いっそ発狂して虎になりたい。そんな、とりとめもない考えをたどりながら、どうにもならないことを、どうにかしようとして、雨の音を、聞くともなく聞く。今月今夜のこの月が曇っているのは、僕の涙のせいか。さよならだけが人生か。汚れっちまった悲しみに、なすところもなく日は暮れる。

 …と、まぁ、ありとあらゆる文豪の言葉を多数引用してみたが…、文豪たちの織りなす世界の数々は、どうして各々こんなにも魅力的なのだろう。時に私たちをクスッと笑わせ、時にスリルを感じさせてくれるだけでなく、自分の存在について深く考えさせられる。そんなあらゆる文学作品の魅力をギュッとつめこみ、さらにワクワクさせる新たな世界を切り開いた作品がこの春、アニメ化される。原作・朝霧カフカ、漫画:春河35の『文豪ストレイドッグス』(KADOKAWA)は、「文豪がイケメン化して能力バトルしたら絵になるんじゃないか」として誕生した、文豪たちが特殊能力を駆使して事件を解決していくバトルアクションストーリー。発行部数累計250万部を突破するほどの大人気作である本作は、ぶっとんだ設定と、登場人物の個性の強さに、文学好きのみならず、誰もが思わず惹き込まれる作品だ。

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 舞台は現代・横浜。孤児院を追い出された青年・中島敦は、餓死寸前のところを太宰と名乗る青年に助けられた。太宰は軍や警察に頼れないような危険な依頼を専門にする異能力探偵集団「武装探偵社」に所属しており、中島も太宰の仕事を手伝うことになる。人食い虎事件や爆弾魔による立てこもり事件。異能力者の中でも最も危険視されている凶悪マフィア・芥川龍之介との戦い。キャラクター化された中島敦と太宰治たちが、次々と降り掛かる凶悪事件に立ち向かう。

 本作は、自分の存在意義について悩む、主人公・中島敦の心の葛藤を描いた物語だ。彼はいろんな文豪たちと関わるなかで少しずつ成長していく。その葛藤に、まるで文学作品を読むように、共感していく自分に気づかされることだろう。

 だが、本作が多くの人を魅了する一番の要因は、その設定の面白さと、異能バトルのスリル感にあるに違いない。文豪はそれぞれのキャラに対応する特殊能力を操り、戦いを繰り広げるが、その能力がいちいち面白いのだ。例えば、自殺嗜癖の太宰治は「人間失格」というあらゆる能力を無効化する能力を有し、国木田独歩は「独歩吟客」という手帳に書いたものを具現化する能力を持っている。「一体、何だその能力は!」とツッコミどころ満載。そして、その激しいアクションの数々は手に汗握るものばかり。マンガではこんなにも想像力を掻き立てられるこのアクションは、アニメにおいてはどう表現されているのだろうか。このマンガとアニメを比較しながら、味わいたいものだという気持ちがおさえきれない。

 名前しか知らない文豪がキャラクターとして登場すれば、その作家の作品も読みたくなる。本作を、読まない手はないだろう。

文=アサトーミナミ