亀梨和也主演でドラマ化された『東京バンドワゴン』第9作登場 堀田家は今日も 「LOVEだねえ」

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/15

下町の古書店を舞台に、4世代の大家族・堀田家が繰り広げる泣き笑いの日々を朗らかに綴った小路幸也の看板シリーズ「東京バンドワゴン」(集英社)の第9作『オール・ユー・ニード・イズ・ラブ』が文庫で登場だ。今回も堀田家は大賑わい。みんなで揃ってご飯を食べ、ひとりのためにみんなで走り回る。『寺内貫太郎一家』や『時間ですよ』など昭和のホームドラマを彷彿とさせる人気シリーズである。今回も春夏秋冬(この巻では秋冬春夏の順)一話ずつ、全4話が収録されている。

本書では青が出演した映画が封切られたり、堀田家の蔵にある蔵書をデジタルライブラリー化する話が出たり、元刑事の茅野さんが「呪いの本」を掴まされたり、薫子さんに認知症疑惑が起きたり。最大の事件は 、中学3年になった研人が「高校に行かない」と言い出す一件。大人の恋あり、老人問題あり、中学生の進路問題ありと、一話に複数の事件や問題が起きるが、何が起きても堀田家の面々が、上は84歳から下は4歳まで一致団結、「LOVEだねえ」を合言葉に解決していくのはいつもの通りだ。いいなあ、この家族。実にいい。

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え、いきなり固有名詞がたくさん出てきて、さっぱりわからないって? いやいや、この膨大な登場人物とその相関を説明しようと思ったら、どれだけ紙幅があっても足りないから。最初から4世代8人(+幽霊1)もいた家族が、結婚したり子供ができたりで人数が増え、さらに家族ぐるみで付き合うご近所さんも1巻ごとにどんどん増えていくんだもの。もしもあなたが第1作『東京バンドワゴン』をお持ちなら、冒頭にある人物相関図と本書の相関図を比べてみてほしい。よくもまあ、これだけ増えたもんだと驚くぞ。でも大丈夫。どの巻も、冒頭でちゃんと登場人物をおさらいしてくれる。

これはこのシリーズが「生きている」証拠なのだ。人は日々、新しい人と出会う。堀田家の人はその出会いを大事にする。だからどんどん輪が広がっていく。読者もいつの間にか「ご近所さん」のひとりになってしまう。ほら、近所の子が小学校に通うようになると「わあ、あの赤ちゃんがこんなに大きくなって」と目を細めることがあるでしょ? まさにその気持ちを小説で味わえるのがこのシリーズなのだ。家族っていいな、ご近所っていいな、と素直に思えるぞ。たまには実家に帰ろうかな、って。

本書の単行本版は、2013~14年に亀梨和也主演でドラマ化された直後の発行だったので、ドラマを見た人には「あ、これって!」と思う(かもしれない)著者からのサービスもある。そこもお楽しみに。そして今年も本文庫と同時期に、第11作となる最新刊『ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード』(集英社)が発売される。毎年4月に新刊が発売され、春の風物詩となったこのシリーズ。その時期に合わせて既刊を最初から再読し、準備万端で新刊を待つ読者も多いとか。今からでも遅くない、あなたもぜひ堀田家に仲間入りを!

文=大矢博子

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