『鬼灯の冷徹』『封神演義』のあのキャラのモデルとは? これ1冊で中国オカルト事情が丸分かり!!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/15


『中国妖怪・鬼神図譜』(相田 洋/集広舎)

中国のオカルトとして、日本でも馴染みがあるのはキョンシーだろうか。1980年代に題材になった映画が日本でもブレークし、その名を知っている人も多いと思う。

また、最近では大人気コミック『鬼灯の冷徹』にも登場している。チュンという可愛いお団子頭の女の子で、逃げる亡者を捕まえる怪力少女だ。この少女も、キョンシーである。

日本の漫画にも登場する中国の妖怪。そんな妖怪やオカルト事情についてもっと詳しく知りたい! という方に、垂涎の書籍が出版された。

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中国妖怪・鬼神図譜』(相田 洋/集広舎)は、清末期の絵入り雑誌『点石斎画報(てんせきさいがほう)』を主に参考とし、中国国内の民間ゴシップや、妖怪、幽霊に関する噂話をまとめた図譜である。本書では中国迷信や風俗などをうかがい知ることができ、さらにオカルトマニアにはたまらない一冊となっている。

キョンシーの話に戻ると、キョンシーは殭屍(きょうし)とも書かれる、ミイラ化した死体の妖怪だ。何らかの事情で(カミナリや月の光の刺激など)で動き出し、人々に危害を与える妖怪として考えられている。

また、本書には鬼神、つまり神様についての記述もある。今の若い人は知らないかもしれないが、1996年からジャンプに掲載されていたマンガ『封神演義』に出て来る「哪吒(なたく)」も、元々は中国の少年神がモデルである。

哪吒は、哪吒太子(なたたいし)と呼ばれ、仙人の太乙真人(たいいつしんじん)が1500年かけて作りあげた宝珠であり、いわば「人造人間」としてこの世に生を受ける。「人造人間の神様」という時点で、非常にマンガ的だが、現在でもアニメやドラマの主人公として華人系の少年少女に人気があるという。海で大暴れした故事から、漁民たちの守護神とみなされ、福建省や台湾では哪吒を主神とする廟が数多く建てられているとか。

面白い妖怪の記述もある。それは「ダッチワイフの妖怪」だ。

昔、王という男がいた。肥満の所為で暑いのが苦手。そこで夏から冬まで竹夫人(ちくふじん)という、「夏に涼をとるために抱いて寝る竹籠のダッチワイフ」と寝ていたそうだ。ある晩、夢の中に美女が現れ、その美女に夢中になり、懇ろな関係になる。それ以来、彼女は晩に来て明け方には帰るようになったが、王はだんだん痩せていった。家人が問い詰めると、王は美女について白状する。家人は竹夫人が古くなっているので怪しいと考え、それを燃やすと、それ以来美女は現れなくなったとか。本書には、このような不可思議な話が多く記載されている。

衝撃的だったのは「冥婚(めいこん)」という俗習だ。

冥婚とは、死者同士の結婚のこと。『三国志』で有名な魏の曹操(そうそう)が、若くして亡くなった息子のために行ったこともあるそうだ。さらに、唐の後半期には冥婚ブームが起こり、制度上でも冥婚を認めるべき、との動きさえあった。

しかも、これが近年まで行われていたことにも驚きを隠せない。中国本土では共和国成立後には姿を消していたが、改革開放政策下で復活したという。本書には、1922年に、未婚のまま死亡した17歳の女性と、その許嫁であった男性との「結婚記念写真」が掲載されている。つまり、死体と生きている人間の写真だ。写真に写っている男性の顔がなんとなくぎこちないのは、死体との結婚を怖がって逃亡を図ったが捕まり、無理矢理撮らされた写真だからだという。なんとも、男性が可哀想だ……。冥婚は本来死者同士の結婚のことだが、変則的に行われることもあったのだろう。

マンガやアニメにも登場する神様、妖怪に興味がある方や、オカルトマニアな方、中国の迷信・俗習に興味がある方、様々な用途で楽しんでもらえる一冊だ。「冥婚」の写真をご覧になりたい方も、ぜひ一読あれ!

文=雨野裾