「突き抜けた埼玉ディスりが最高!」全国的な自虐PRブームの火付け役!『翔んで埼玉』

マンガ

公開日:2016/4/15


 初めて発表されてから30年以上が経った2015年、『翔んで埼玉』として再び出版されたコミックは、TVに取りあげられるいなやネットで爆発的に話題を呼んだ。とことん埼玉をディスりまくるというその内容に「突き抜けた埼玉ディスりが面白すぎ!」「清々しいほどの自虐が最高!」と大反響を呼んでいる。

 『翔んで埼玉』は大人気ギャグ漫画『パタリロ!』の作者・魔夜峰央(まや・みねお)によって描かれ、1986年に出版された短編集『やおい君の日常的でない生活』に収められた作品。その内容は終始一貫して埼玉県へのディスりに徹している。例えば登場するキャラクターが「生まれも育ちも埼玉なんておぞましい」「埼玉県民にはそこらへんの草でも食わせておけ!」というような過激な発言をしたり、埼玉県民が県外に出ると埼玉狩りが行われ、埼玉へ強制送還されるといったもの。埼玉県民が読んだら激怒しそうなものだが、反応は意外なものだった。

 テレビで取りあげられると瞬く間に話題となった同作に対し、「埼玉県が取りあげられて嬉しいな」「埼玉あるあるを知ってもらえて嬉しい! マンガにしてくれて有難う!」という地元民の喜びの声が溢れる事態に。さらに、埼玉県知事・上田清司は「悪名は無名に勝る」とコメント。各市長からも激励コメントが寄せられているという。

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 実は自虐ネタでPRをしている都道府県は多い。例えば島根県もそのひとつ。2011年から『島根自虐カレンダー』なるものを制作し、「島根はもう本気出しつくしました」「また来るぜ! と言ってたバンドが二度と来ない」「日本で47番目に有名な県」といったネガティブなコメントを掲載。他にも自虐的な商品として、缶詰に「もう『鳥根』正解にします」「いいえ、砂丘はありません」と、鳥取県と間違われやすいことをネタにしたコメントをデカデカと書いて販売しており、自虐PRに全力を注いでいる。

 また茨城県では、2015年に都道府県魅力度ランキングで3年連続最下位という悲しい記録を更新したことを受け、遂にPR動画の制作に着手。茨城出身のお笑い芸人、渡辺直美を主演に迎えて制作したのだが、その内容が自虐感満載。47都道府県から生徒が1人ずつ集まった高校のとあるクラスで、渡辺が「茨城が無くなったらレンコンや干し芋ショックが起きる」など茨城をアピールするも、周囲の生徒から白い目で見られるというもので「悲しいPRだけど、なんか親近感わく」「茨城がなぜか愛おしく感じられてくる」と評判を呼んだ。

 他にも、広島県は2012年に同県出身の芸人・有吉弘行をCMに起用し「おしい! 広島県」というコピーで自虐を展開し話題に。富山県はPRポスターを制作し、「印象が薄い」「遠い」「暗い」「寒い」「観光の目玉がない」という大きな文字を載せ、そのネガティブな文言に抗うように、「住みやすい」「暮らしやすい」「カニがうまい」と米粒のような文字を配置した。このインパクト大のデザインは「富山県のネガティブパワーすごいな」「負のオーラがハンパない(爆)」と注目を集めている。

 こうした最近の自治体の自虐PRは「申し訳ないけど笑わずにはいられない!」「逆に行ってみたくなる」と好意的な声が多数上がっていることからも、概ね成功していることが伺える。時代が追いついてきたのか、30年前の『翔んで埼玉』から始まったと言えなくもない昨今の自虐ブーム。『翔んで埼玉』の埼玉ディスりを楽しみながら、各都道府県の自虐PRも見てみると面白いのでは?

■『このマンガがすごい!comics 翔んで埼玉
著:魔夜峰央
価格:756円(税込)
発売日:2015年12月24日
出版社:宝島社