被災地で1冊の『週刊少年ジャンプ』がつないだ支援の輪
公開日:2011/9/5
あゆみBooksの仙台青葉通り店では、取次各社の協力を含めてスタッフ総動員で売り場を立て直し、地震からわずか4日後の15日夕方に時短ながら営業を再開。同店の河野辺善徳店長によれば、震災以降、土日に関しては通常と比べて売り上げが4~5割ほど上がったという。
「とくに多かったのはコミックスのまとめ買いです。『ワンピース』はもともとよく売れていた商品ですが、震災後に思い切って面陳したところ在庫が足りなくなるほど売れました。当初は雑誌も取次からの入荷がなくて出版社から直送してもらったりしたのですが、置いていくそばからどんどんなくなっていくという勢いで売れましたね」(あゆみBooks 栗原浩一さん)
14日に営業を再開した仙台市青葉区の塩川書店五橋店は、雑誌の配送が止まっている中、客の一人から「皆に読ませてあげてください」と『週刊少年ジャンプ』の最新号を譲り受けた。そこで、店頭に「ジャンプ読めます!」という貼り紙をしたところ、次々と子供たちが店にやってきて最新号を読み耽ったという。この塩川書店の異例の「立ち読み許可」は新聞やヤフーのニューストピックスに取り上げられ、大きな反響を呼んだ。
同店の塩川祐一店長は言う。
「記事を読んだ全国の方々から『子供たちにぜひ読ませてください』とジャンプだけでなく『週刊少年マガジン』や『コロコロコミック』といったマンガを数多く送っていただきました。きっかけになったジャンプはもうボロボロになってしまいましたが、今でも大事に取ってありますよ」
この「立ち読み許可」は流通が復旧するまでの短い間のみだったが、塩川書店でマンガ最新号を読んだ子供を含む多くの人々が「いくらかでもお金を払いたい」と申し出て、店頭での募金活動も始まった。たった1冊の『週刊少年ジャンプ』が、被災地の支援にもつながったのである。
多くの人々が、最低限の生活物資を確保した後、本や雑誌を求めた。本や雑誌に家や大切な人を失った悲しみや苦しみを救うような大きな力はないかもしれないが、落ち込んだ心をほんの少しでも軽くすることはできたのかもしれない。それは、本や雑誌の持つ確かな力のひとつではないだろうか。
(ダ・ヴィンチ7月号より)