“ママが2人”を目指してーーレズビアンカップルの妊活奮闘記が教えてくれること

恋愛・結婚

公開日:2016/4/25

〈私たちってずっと『ふつうと違う』ってことで悩んできたじゃない〉〈だからこそわかってあげられる痛みや悩みがあると思うんだ〉――

 女性同士のカップルとして東京ディズニーリゾートで挙式したことで話題となった、東小雪さんと増原裕子さん。2015年には、渋谷区が発行する「パートナーシップ証明書」をいちばん最初に取得したことでも注目を浴びた。
 ふうふとして暮らしていくうち、東さんと増原さんは自然と「子どもがほしい。二人で育てたい」という思いが芽生えてきた。しかし日本社会において、同性カップルが子どもを持つことに対する偏見は、まだ少なくない。「ふつう」と違う家族に生まれたことによって、子どもに苦悩する運命を背負わせてしまうのではないか……。二人は深く悩み、時には泣きながら議論し、そのすえに「やはり、子どもをつくろう」と決意したのだった。

 『女どうしで子どもを産むことにしました』は、小雪さんと裕子さんが結婚3年目で「子どもを産もう」と決めてから、精子提供ドナーを見つけるまでのストーリーを描いたコミックエッセイだ。
 子どもの幸せについて考え尽くしたうえで「産もう」と決めた二人だったが、世間の目は冷たい。妊活中だと言うと、〈子どもが不幸になる〉といった意見や、〈子どもも同性愛者になるんじゃないか〉といった誤った偏見を投げつけられる。〈同性愛ってそんなにいけないことなの?〉小雪さんのセリフに心が痛む。

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 しかし、そこであきらめたりはしない。二人は同性愛について日本より進んでいるニューヨークに渡り、子育て中のレズビアンカップルやゲイカップルに会って話を聞くことにした。〈両親がレズビアンだということで悩んだことは?〉と質問されたレズビアンカップルの子どもが、〈え? 質問のイミがわかんないんだけど……私にはママが二人いる、ただそれだけよ〉と答えたシーンがとても印象的だった。
 同性カップルが子どもを持つことを否定するのに「子どもがかわいそうだから」は理由にならないのではないか。マイノリティであることによって、子どもがいじめられない社会にするために、周りが意識を変えていかなければならないと思う。そのためにも今回、漫画という形で本書が出版された意義は大きい。漫画を担当したすぎやまえみこさんの描くキャラクターが、表情一つとっても、とにかくかわいい。まずは気軽に手に取ってみてほしい。
 結局「シリンジ法」なる手法で妊活にトライすることを決めた二人。シリンジ法とはその名の通り、針のないシリンジ(注射器)で精子を体内に入れる方法だ。当然、ドナー(精子提供者)が必要になる。精子を提供してほしいと頼まれた相手は、やはりおおいに困惑する。(「第6話 男心もフクザツなのです」をはじめ、ドナー側の男性の心理も丁寧に描かれている)。ドナー探しはそう簡単には進まない。紆余曲折あり、やっとのことでゲイの友人がドナーになってくれることが決まり、妊娠にトライするところで本は幕を閉じる。

 ディズニーで素敵な結婚式を挙げた二人が、今度はママになって、子どもと一緒にディズニーで楽しむ姿を見たい。そう願わずにはいられない。

文=林 亮子

 

女どうしで子どもを産むことにしました