あなたが負けていたのは、企画ではなく「声」だった!

ビジネス

公開日:2016/5/9


『ビジネスがうまくいく発声法』(秋竹朋子/日本実業出版社)

 自分の企画の方が内容が良いはずなのに、プレゼンの後で採用されるのは別の人の企画……。そんな苦い経験を1度はしたことがないでしょうか?

 実はコミュニケーションにおいて、見た目などの「視覚情報」の次に重要なのが、口調や話の早さ、声のトーンなどの「聴覚情報」。なんと、声が相手にたいして影響を及ぼす割合は約4割にも上ります。しかしビジネスの現場において、見た目や話の内容はチェックするのに、「声」に気をつかっている人は、ほとんどいません。

 いったんついてしまった習慣やクセを変えるのは大変ですが、声は少しの練習ですぐに変えることができます。日本初「超絶対音感治療法」のボイストレーニングが話題を呼び、テレビほかマスコミ出演多数の秋竹朋子さんの著書『ビジネスがうまくいく発声法』より、ビジネスパーソンにとって役立つ、具体的な声のトレーニングをみてみましょう。

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1. まず、百利あって一害なしの「腹式呼吸」を身につけよう!

 ヴォイストレーニング基本の「キ」は腹式呼吸です。秋竹さんのセミナーや個人レッスンでも、まずは「腹式呼吸」を指導しているそうです。

 腹式呼吸には、声を良くすること以外にも様々な利点があります。インナーマッスルが鍛えられることによるダイエット効果や、代謝のアップによる肌のトラブル防止、便秘解消などがそれです。また腹式呼吸を続けていると、体がリラックスして脳がアルファ波を出し、ひらめきや直感を得やすくなります。まさに良いことずくめの「百利あって一害なし」の呼吸法なのです。

 声作りの基本としてはもちろん、ひらめきが必要となるビジネスシーンにも役立つ、「腹式呼吸」をまずはマスターしましょう。

ステップ1 正しい姿勢で立つ(プリマドンナ姿勢法)

足は肩幅より少し狭く開き、両足に均等に体重を乗せます。重心は、踵側ではなく、前方のつま先寄りにします。このとき、お尻、背中、肩、首、頭が一直線になるように背筋を伸ばしてください。プリマドンナが舞台に立つようなイメージです。

ステップ2 お腹に力を入れて息を吐きます

右手をお腹にあてて、左手は口の前においてください。冬の寒いときに、手を息であたためるようなイメージで「ハァー!」と息を吐いてみます。それが、腹式呼吸です。息を吸うときは、鼻から自然に入ってくる感じです。

ステップ3 10秒間、息を吐く練習をします。

「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10」と10秒間、腹式呼吸で長く息を吐いてみましょう。これを3回やったら、今度は20秒間、長く吐く練習です。それを3回やったら今度は30秒間にチャレンジ。これで約5分間。毎朝、5分間、練習をしてみましょう。1日のはじまりに腹式呼吸をすると、爽やかな気分で活動できます。

2. 緊張したときの声の処方箋

 人前に立つと緊張してしまって、声がふるえてしまうという人は多いのではないでしょうか。

 そんな時、周りの人から「緊張しなくても大丈夫だよ」「あなたらしく話せばいいんだから」と、アドバイスされることがあります。きっとアドバイスした人は、相手を安心させてあげようとして言ったのでしょう。しかし、そう言われても緊張はとけないし、周りに緊張しているのが伝わってしまっている! とかえってパニックになってしまったり……。

 具体的な対処法がなければ、簡単に気持ちを切り替えることはできません。そんな時は、緊張してもバッチリ乗り切れる以下の3つの方法を試してみましょう。

処方箋1 腹式呼吸で深くゆっくりと息を吐く

緊張すると呼吸が浅くなります。そういうときは、話し始める前に腹式呼吸で深くゆっくりと息を吐いてみましょう。深い息でゆっくりと吐いていると、緊張が取れていきます。緊張が取れるまで、何度も深呼吸してみてください。緊張さえ取れれば、練習の成果がバッチリ出てくるでしょう。

処方箋2 「アーーー」と限界まで口に出す

人前に立つ前にこの練習を3回やってみましょう。「アーーー」と息が続く限界まで、口に出してみるのです。直前の練習でも、声量がかなりアップしますので、自然と声が出るようになります。

処方箋3 いつもより間を多く取る

人前で話すときは間を多く取るようにしましょう。間を取って、呼吸を整えながら話すようにしましょう。間を取ることで、次の言葉を際立たせることもできますし、聴衆を惹きつけることができます。

 次の文を十分に間を取って話す練習をしてみてください。

・私は (間) ○○です。 (間) よろしくお願いいたします。
・みなさん。 (間) これから話すことは、 (間) とても重要です。
同書86~89ページより

3. 会議で優位に立つ「声」作りのツボとコツ

 会議などでは、大きな声、よく通る声を出す人の意見が採用されがちです。企画の内容や分析データはライバルよりしっかりしているのに、なぜか意見が通らない。それは、あなたの声の出し方・伝え方が、残念ながらライバルに負けてしまっているからかもしれません。

 小さい声でボソボソと発言していたら、大きな会議室だったら聞き取りにくいですし、自信がなさそうに見えます。そんな人の意見は、はなから聞いてもらえません。まずは、ある程度大きな声を出せるようになること。ただし、正しい発声をしなければ、ノドを痛めてしまいますし、うるさいだけのがなり声になってしまいます。

 腹式呼吸に声を乗せて、よく通る大きな声の作り方を練習してみましょう。

ステップ1 まずは腹式呼吸をしましょう

息を吐くときにお腹をへこませます。吐くときに意識を集中させましょう。

ステップ2 腹式呼吸に声を乗せて出します

腹式呼吸で「アー」と長く伸ばして声を出してみましょう。だんだん大きな声を出していきます。

ステップ3 限界まで大きな声を出してみましょう

MAXの大きな声を出してみてください。何度も限界を出していると、いつの間にか限界が少しずつ上がっていきます。次のセリフを腹式呼吸の大声で言ってみてください。

・ありがとうございます。
・いかがでしょうか。
・よろしくお願いいたします。

ステップ4 太くて迫力のある声を出してみましょう

腹の底から息が吐けるようになると、太くて迫力のある声が出せるようになります。会議のなかでここ一番というときはスイッチを入れて、この声を出してみましょう。まずは、腹の底から息を吐きながら「ハッ、ハッ、ハッ」とスタッカート(1音ずつ短く切る)で大きな声を出してみます。

ステップ5 レガートで「ハー」と伸ばします

腹の底から息を吐きながら大きい声を出せると迫力がついてきます。スタッカートができるようになったら、レガート(切らずに滑らかに続ける)に挑戦です。「ハー」と伸ばして声を出してみてください。太くて迫力のある声になっていませんか。

4. 小さい声で話しても心をつかむ「声」を作る!

 前項でも紹介したように、「よく通る声」や「ハキハキ大きな声」はビジネスパーソンにとって重要です。実際、ビジネスパーソンは声の大きい人が出世するといわれていますし、成功している社長や経営者は、一様に声が大きい傾向にあります。

 一方で静かなオフィスや、小規模での商談など、日本のビジネスシーンでは小さな声で話さなければいけない場面も多いです。周囲の目を気にする傾向のある日本人の中では「周りに聞かれたくないから、声をおとして」なんて、注意されることがあるかもしれません。

 しかし、小さい声で、きちんと相手に通る声を出すのは、慣れない人には難しいものです。場面に合わせて、小さい声でもきちんと相手に伝わる「声」を出すために、次に紹介するトレーニングを実践してみましょう。

ステップ1 腹式呼吸で強く「スッ、スッ、スッ」と声を出してみましょう

腹式呼吸に声を乗せて吐き出します。「スッ」の音は吐く息が大量に必要になりますので、練習にはもってこいです。

ステップ2 大きな声で「ハッ、ハッ、ハッ」と声を出してみましょう

「スッ、スッ、スッ」に声を乗せて出してみます。「ハッ、ハッ、ハッ」と大きな声で出してみましょう。

ステップ3 小さい声で「ハッ、ハッ、ハッ」と声を出してみましょう

今度は、吐く息の量を減らして、「ハッ、ハッ、ハッ」と声を出してみます。腹式呼吸を使って、小さくても遠くに飛ばすようなイメージで声を出してください。

ステップ4 小中大の3段階の声を出してみましょう

「ハッ、ハッ、ハッ」と小さい声で5回、中ぐらいの声で5回、大きい声で5回、このエクササイズをやってみてください。腹式呼吸で息をコントロールするのがポイントです。

 どれも簡単なのに、確実に「声」を変えることができるエクササイズです。

 たかが「声」、されど「声」です。声が変われば自信がつきます。自信がつけば、人生と仕事を一瞬で変えることができます。本書ではさらに具体的に、商談やプレゼン、会議などの場面での、効果的な声の出し方や、ビジネスに即効性のあるワンポイントアドバイスを、多数、紹介しています。

 大切な商談の前はもちろん、毎日の日課のトレーニングとして取り入れてみてはいかがでしょうか。

文=日本実業出版社