社会

ソーシャルメディアで視野が狭くなる?――「フィルターバブル」の恐怖


『フィルターバブル──インターネットが隠していること』(イーライ・パリサー:著、井口耕二:訳/早川書房)

 ネットで得られる情報は有益だ、けれどもマスコミは信用できない、という声をよく聞くようになった。また、ヘイトスピーチを繰り返すような人たち、科学的に否定されたのにデマを拡散し続ける人たちが、知らぬ間に身近なところにいて驚かされた、ということも増えた。情報を巡る環境が何か変化していることを感じさせるが、いったいなぜ?――そんな疑問に答えてくれるのが、文庫本として再刊行された『フィルターバブル──インターネットが隠していること』(イーライ・パリサー:著、井口耕二:訳/早川書房)だ。

 いま、あらゆるウェブサービスが「パーソナライズ」という機能を備えている。Amazonは購入履歴からおすすめの商品を紹介し、Googleは自分や友人・知人の検索結果を基に表示されるサイトの順番を変える 仕組みも備えている。個人のウェブ上の行動履歴に基づいて、表示される情報の取捨選択が行われていることが、もっとも明白なのがFacebookだろう。友だちが投稿した情報は時系列で全て表示されるのではなく、「いいね!」の数などの要素によって、表示される優先順位が変わる。結果として目に触れなくなる情報も出てくるのだ。

 情報が溢れるインターネットにおいて、このような取捨選択が自動的に行われることは一見便利だ。だが、本書ではこれが「重要だが理解に時間が掛かったり、心理的な負荷が高い事柄」から、ユーザーの目を逸らしていくことに警鐘を慣らしている。それはユーザーが知らぬ間に泡(バブル)に覆われて、その中から歪んだ像で世界を見るようなものだ、というわけだ。

 そうやって毎日繰り返し、同じような情報にばかり触れていたら、どうなるだろう? 著者はそれは偏食にも似ると指摘する。好みの食べ物ばかり摂っていれば、健康を損ねる。同じように好みの情報にばかり触れていれば――結果は明らかだと言えるだろう。

 いま、Facebookのようなソーシャルメディアは、ニュースや広告を配信するメディアとしても重要な存在になってきている。記事を「いいね!」したり「シェア」したりすると、その履歴はサイト運営者によって記録され、自分の目の前に表示される記事も似た傾向の情報が優先されるアルゴリズムがそこには存在している。情報の提供元や広告主にとってみれば、ターゲットになる可能性が高いユーザーに情報を届ける有益な仕組みだ。しかし、私たちユーザーにとってみると、それがどのようなルールに則って行われ、私たちの目から何が結果として隠されているのか、どうすればそのフィルターを外したり、調整できるのかはとても分かり難くなっている。

 その仕組みを明らかにすることに、どのIT企業も消極的だ。しかし著者が主張するように、私たちが甘んじてその仕組みに身を委ねてしまっては、いつの間にかフィルターバブルに囚われた世界で生きていくことになってしまうだろう。その怖さを知り、どうすればその呪縛から逃れることができるのか? 日本では2012年に単行本が刊行された本書だが、インターネットが本質的に持っていたはずの自由を取り戻すための、いまでも十分に有効なヒントが詰まっている。

文=まつもとあつし



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