吉原遊郭を舞台に、美青年が元遊女の死の謎に迫る!

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/28

 大学の史学科で民俗学を学び、江戸時代の文化、とりわけ遊郭に強く惹かれたというミズサワヒロさん。 
  
「81ルルルドラマチック小説賞」を受賞し、デビュー作となった『吉原夜伽帳―鬼の見た夢―』(小学館 ルルル文庫)は、江戸の廓を舞台にした幻想的なホラーミステリーだ。
  
“吉原の外道菩薩”と呼ばれる、白髪赤眼の美青年・弥太郎。“死んだ人間が見える”という噂を持つ彼に持ち込まれた、元遊女の死にまつわる謎。それ追う弥太郎だったが、妹のように思う女郎見習いの少女・末葉に異変が起きて――。あらわになっていくのは、吉原に生きる者たちが憑かれる愛と憎しみ。男と女、肉親、師と親子・・・・・・愛しているからこそ生まれる複雑な感情がミステリーも絡んでいく。
  
「心に刺のようなものを残す小説がすごく好きで。苦しさやつらさを刻みながらも、その感情が糧となるようなものを書きたかった」とミズサワさん。そんな深い心理を描写する一方で、活劇のように描かれるのは、弥太郎に淡い思いを抱く末葉の成長の物語だ。
  
「大人相手にポンポンとキツイことを言う末葉は、ツンデレキャラを意識したのですが、自分を“わし”と呼ぶ、萌えない子になってしまって(笑)」
  
魅力的なキャラクターが次々登場するのも本作の楽しさ。様々な要素の糸が物語を織り、迎えるクライマックス――それはホラーミステリーとして衝撃的である一方、切ない余韻も残していく。
  
「私の想うホラーとは、怖いだけでなく、胸の中に切なさや哀しみを残していくもの。そういう世界観を本作から感じていただけたらうれしいです」
  
(ダ・ヴィンチ8月号 davinci pick upより)