「どうして『寝てない』と言って寝てるの?」 「なんで大人は急いでいるんですか?」子どもの率直な質問へのみうらじゅんの回答が大人にも刺さる

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/15


『大人に質問!「大人ってどのくらい大変なんですか?」』(みうらじゅん+児童館の子どもたち/飛鳥新社)

子どもとは実にするどい生き物だ。大人同士ではうやむやにしていることでも、するどく突っ込んでくる。そしてしつこい! 「これってなあに?」「どうして?」「どういうこと?」そんな子どもの質問攻めに苦しめられた経験があるという大人も少なくないのではないだろうか。ひとつひとつの質問に真摯に向き合っているときりがないが、適当に答えていると見破られてしまうというのが、質問攻め被害者たちが頭を抱える悩ましいところだろう。

そんな子どもの質問の数々に戸惑っている大人たちに、ぜひおすすめしたいのが、『大人に質問!「大人ってどのくらい大変なんですか?」』(みうらじゅん+児童館の子どもたち/飛鳥新社)だ。さまざまな方向から投げかけてくるするどい子どもたちの質問の数々に対して、漫画家・イラストレーター・ミュージシャン・エッセイストとマルチに活躍するみうらじゅん氏が、時に真面目に、時にウィットに富んだ答えでスバリと回答する。

たとえば、9歳の子どもからのこんな質問。

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「どうして大人はたまにしかお小遣いくれないの?」

これに対するみうら氏の回答はこうだ。

「一度にたくさんのお小遣いをあげると、子どもがカツアゲに遭った時、落ち込みようがハンパないことを知ってるからです」

子どもにはちょっと荒い回答であるようにも感じるが、大人の面目を保ちつつ、納得させる押しの強さのある回答は、いざと言うときに参考にできるかも。

時にはこんなウィットに富んだ問答も繰り広げられる。

「なんで人間は裸で生まれるの?」

真面目に答えようと思ったら、たいていの大人は答えに窮することだろう。そんなときにはこんな答えを。

「出産は長時間に及ぶこともありますが、予定日より早く生まれることだってあります。そんな時に“出る時はどんな服を着て出ようか?”などと考えてる暇はありません。取るものも取り敢えず裸で出てしまったということでしょう」

子どものするどい質問はまだまだ続く。こんな質問は大人も気になるかもしれない。

7歳の女の子からの「なんで大人は急いでいるんですか?」という質問に、「急いでいるのは、急いでいないと怠けていると思われてしまうからです」と答えるみうら氏。「だから、大して忙しくなくても急いだフリをしているわけなのです」という答えに思わずドキリとしてしまう人もいるのではないだろうか?

大人たちは子どもたちに見られていると自覚してもう少し気を引き締めて生きていなければいけないだろう。8歳からの女の子からの質問はこんな内容だ。

「どうして『寝てない』と言って寝てるの?」

確かに、どう見ても寝ているのに「寝てない」「眠れない」と言い張る大人はいる。さて、こんな質問にあなたはどんな答えを用意することができるだろうか。みうら氏の回答は以下のとおりだ。

「寝てないと言った方がよく寝てると言った人より忙しそうに聞こえるからです。大人になると忙しい方が、忙しくない人より偉いという風習があります。でも、それは寝ないで仕事をした人であり、寝ないでテレビを見てた人ではありません。本当はちゃんと寝て効率良く仕事をした人のほうが出世は早いと言われています」

いや、もう、ここまでくると子どもではなく大人が諭されているような気持ちさえしてくる。とにかく大人は無駄に忙しい生き物であるようだ。

他にも、「なんで早く寝ないといけないの?」「髪の毛は一日何本抜けるんですか?」「どうして大人は怒るのに、なんで子どもが悪口言っても子どもが悪くなるの?」「なんで大人は会社をやめたくなるのですか?」「どうして夏は暑いんだ?」などなど素朴な質問がもりだくさん紹介されている。子どもからの質問攻めの対策として参考にしたいという人はもちろん、ちょっと変わった珍問答集として楽しみたいという人にもおすすめの1冊。

人生の酸いも甘いも噛み分けた大人こそ、答えの面白さに魅了されてしまうかもしれない本書。飾り気のないストレートな質問と明確なまでに示された答えが、あなたの思わぬ人生の道しるべとなるかもしれませんよ。

文=Chika Samon