「未婚当然時代」が到来!? 結婚しない人たちが求める“絆”とは

社会

公開日:2016/5/17


『未婚当然時代 シングルたちの“絆”のゆくえ(ポプラ新書)』(にらさわあきこ/ポプラ社)

 日本では2010年時点で、生涯未婚率(50歳時で結婚をしたことのない人の割合)が男性で2割、女性で1割を超えた。未婚率が増加した理由は様々だろう。女性の社会進出が進み、不況を経験して終身雇用制が破綻し始め、この二、三十年で日本社会を取り巻く環境は大きく変化した。この変化が良いことなのか悪いことなのか、一概には言えないが、男女ともに働き方や生き方の選択肢が増えたことは間違いないと思う。しかし、それ故に未婚率が増加したとも言える。

 結婚しない人が増えるということは、そのまま年老いていく人も増えるということ。今は若くて独身生活を満喫している人でも、将来に何らかの不安を抱えている人は多いと思う。

 そこで今回ご紹介したいのが『未婚当然時代 シングルたちの“絆”のゆくえ(ポプラ新書)』(にらさわあきこ/ポプラ社)だ。結婚や婚活について取材を続ける著者が、100人ほどにインタビューを行い、そこから見えてくる独身者の“絆”の行方を探る。

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 取材対象は、結婚相手を見つけるために婚活に励む人や、シェアハウスやゲストハウスでの人間関係を楽しむ人、ビジネスを通して人とのつながりを求める人など様々。共通しているのは、誰もが何らかの“絆”を求めているということだ。

 他人との絆というと、結婚を連想しがちだったのだが、本書では結婚以外の方法で絆を求める人にも多くインタビューを行っている。例えば、シェアハウスでの絆を築く男性。家族のような強い絆ではないけれど、空間を共有し、一緒に暮らしている間は助け合うというものだ。相手に必要以上に求めることはせず、お互いを尊重し、適度な距離感が保たれる。最近のシェアハウスの増加傾向を見ると、この種の絆を求める人が増えているのかもしれない。

 一方で、絆を求めて生活拠点自体を変えるという決断をするケースもある。地方での婚活をする人や、地方に移住をして仕事をする人だ。どちらも、テレビ番組で特集されているのを見たことがあり、注目度の高さがうかがえる。友人や家族のいる慣れ親しんだ場所から、暮らしたことのない新しい土地に行くのは容易ではないと思うが、今いる場所では得られない絆があるのだろう。人口減少に悩む地方自治体は多いので、このような取り組みが活性化されれば、両者ともにハッピーになれそうだ。

 著者も指摘しているが、かつての日本社会では、家族や地域のつながりが今より濃く、正規雇用も多く会社での人間関係も生活の大きな割合を占めていた。ある程度の年齢になると結婚をして家庭を持つ人も多く、その中で自然と絆が育まれていったのだ。

 しかし現在では、非正規雇用が増えて会社での人間関係は以前より希薄になり、未婚率は上昇の一途を辿っている。これだけ社会が大きく変化しているのだから、今までとは違う形の絆が生まれるのも当然だろう。つまり、自分からアクションを起こしていけば、どんな形の絆でも、どんな強さの絆でも、育んでいける可能性があるということだ。

 将来に不安を感じている方だけではなく、今までとは違う人間関係を築いてみたい方や新しいことを始めてみたい方まで、幅広くオススメしたい一冊。本書を参考にして、これからの絆の在り方を模索してみてはいかがだろうか。

文=松澤友子