オトナ相手への上手な物事の教え方とは? 教え上手と教え下手の違い

ビジネス

公開日:2016/5/19


『オトナ相手の教え方』(関根雅泰/クロスメディア・パブリッシング)

 他人に物事を教えるのは難しい。特に大人に教えるとなると、何をどう教えたらよいかわからないという人も少なくないだろう。大人は何十年も自分の考えで生きてきて、既に知識もくせもできてしまっている。それなのに、知識をゼロから吸収する子どもに対するのと同じような教え方をしたらうまくいかなくて当然だ。

 新入社員が入ってくる季節、つい先日までは教わる立場だった人が今度は教える立場になるかもしれない。そこで、「常識の無い新人」が来ても「中途採用の年上の部下」が来ても慌てないように、今回は『オトナ相手の教え方』(関根雅泰/クロスメディア・パブリッシング)を取り上げる。

教え上手と教え下手はどこが違う?

 教え上手と教え下手はどこが違うのだろうか? この本はその違いを知るところから始まっている。これまで出会った「教え上手」や「教え下手」の特徴を尋ねると、たいていの人は具体的に挙げられるという。そして、見事に正反対の特徴が並ぶ。教え上手の特徴を一言で言うと「相手本位」、つまり教え下手は「自分本位」なのだ。自分の教えたいことや伝えられることだけを、自分のペースで教えようとするから教え下手になってしまう。教える相手が100人いたら教え方は100通りあるはずなのに、自分本位な教え下手は自分にとって教えやすいやり方1つだけで教えようとするから、なかなか相手に伝わらない。「このくらい知っていて当たり前」「この程度できるはずだ」と自分の物差しで測ってしまうと失敗するのだ。そのことに気がつけば教えやすくなる。

advertisement

まずは相手を知ることから

 教える相手はそれまでに得てきた知識や経験によってスタート時点のレベルが違う。1人1人性格が違い、育った環境が違えば持っている文化も異なる。そのため、教える内容や到達させたいレベルが同じでも、そこに行きつくまでの教え方は相手によるのだ。相手が子どもだったら、必ず年が下で知識や経験も教える側よりも浅い。そのため、よほどのことが無い限り素直に聞いてもらえる可能性が高いのだが、大人の場合はそうもいかない。特に会社などでは、新入社員と教える先輩社員に年の差がほとんど 無かったり、逆に教える相手の方が年上だったりすることもある。学歴に至っては相手の方が上ということも十分にあり得るから厄介なのだ。そのため、相手のプライドを傷つけないように気を付けながら、現状のレベルを測る質問をし、それに合わせて目標のレベルを設定する必要がある。

一方通行では意味が無い

 教える際に、教える側が一方的に言いたいことを話したり、マニュアルを渡して「読んでおいて」だけで終わらせたりしてはいないだろうか? 大人に対して上手な教え方ができる人は、相手との会話の中で、相手にこれまでどのようなやり方をしていたか、自分たちのやり方を取り入れてもらうためにはどう説明したら納得してもらえるかを考えながら、相手にも適度に意見を言わせ、なぜこのやり方が必要なのかを説明する。ただ一方的に教え込むやり方は大人相手には向かないのだ。

 例えば、教える側にとって正しいと感じられる事柄でも、相手にとっては間違っているように感じられることもあるだろう。もしかしたら、これから教えようとしていることが本当に間違っている場合もあり得る。そのため、教えるのときは一方通行ではなく、相手と言葉のやり取りをして、どの程度わかっているか、何が疑問なのかを受け止めながら進めていく必要があるのだ。そのとき、YESかNOかで答えられるような質問の仕方をしてはならない。「ここまででわかったことをレポートにまとめてください」「ここまでの知識で実際にやってみましょう」などという方法で確認をすることが大事だ。教えるということは、相手が反応して初めて完了するもの。一方的に伝えただけでは終わらないのだ。

 このように、本書では大人を相手に教える立場になった多くの人が迷う事例を挙げながら、教え方の具体例が語られている。この機会に、教え上手の上司や先輩を目指してみてはいかがだろうか? この本はきっとその助けになるはずだ。

文=大石みずき