『コクリコ坂』震災後さらに強くなった宮崎駿親子のテーマは

映画

更新日:2014/2/8

 7月16(土)から、スタジオジブリの最新作映画『コクリコ坂から』が公開されている。 高度成長期の横浜を舞台に高校生の愛と友情、古い建物の取り壊し事件を交差させて描いた作品だ。宮崎駿の脚本をもとに、『ゲド戦記』以来5年ぶりに監督に挑んだ宮崎吾朗さんに、作品を通じて伝えたい想いを聞いた。    
  
 物語のあらすじはこうだ。  1963年、日本は戦後の焼け跡から奇跡の復活を遂げていた。東京オリンピック開催を目前に控えた時代、横浜のとある高校では、通称カルチェラタンと呼ばれる由緒ある建物を取り壊すべきか、保存すべきかの論争が起こる。そんな中、高校2年生の松崎海(声:長澤まさみ)は、建物の保存を訴える3年生の風間俊(声:岡田准一)と出会い、心を通わせていく。ある日、海は建物保存のためにある提案をする・・・・・・。  
  
「そもそも俊が古い建物を保存しようとするのは、両親を亡くした彼にとって自分が自分であるために必要な場所だからであって。彼に恋をする海もまた、家族の歴史が刻まれた古い家を大事に想い、暮らし続けている。一方で古いものを壊すというのは、自分とつながる人びとの生きてきた歴史や痕跡を全部消すことなのだと思います。でもそうやって、過去をないがしろにし続けると、最終的には根無し草になるのではないか。僕にしても、あの親父がいたから今ここにいて、自分も子どもとつながっているわけですから」(宮崎吾朗さん)  
  
 震災による影響もあったようだ。    
  
「脚本を書くにあたり、宮崎駿は“人を恋(こ)うる心”をテーマに掲げたけれど、人を恋うるとは、そうした人間の縦のつながりも含めたことであり、大震災後、その意味を僕自身、より強く感じていますね。“人を恋うる心”が、この映画から伝わればいいなと思っています」    
  
 ファンタジックな要素を排した新たなジブリの挑戦ともいえるこの作品に、日本中が注目している。   
  
(ダ・ヴィンチ8月号 スタジオジブリ最新作スペシャルより)