堺雅人、3.11について 「何よりも怖いのは、思考停止すること」
公開日:2011/9/5
「当惑する軍人、というんでしょうか。そんなイメージは、撮影に入る前からありましたね。あるいは、生活者としての軍人。汗をかく軍人。リアルな、普通の人としての軍人を、ここで僕は演じることになるのではないかなと」
戦争肯定か、反対か。その、どちらかに立ったほうがラクだろう。でも、真柴はそれをしない。 「考えるべき時は自分で考え、惑うんです」
真柴の惑いや震えは、小説よりも映画のほうにずっと、色濃く書き込まれている。堺さんが真柴を演じるというその瞬間、それらは出てきたものなのかもしれない。
「僕以外の出演者は、それぞれ鮮やかな色を持っているんです。真柴だけグレーで、右でもなく左でもなくフラフラしている。そこが演じていて非常に面白いと思ったところでもあるんですけどね。……でも、僕の役は見ていてきっと、モヤモヤしますよね?(笑)」
モヤモヤするからこそ、見ている側も、思考と感情が動き続ける。 自分は今、何をなすべきか。自分が信じているものは、本当か? 惑い震えながらも問いを止めない真柴の姿は、3・11の震災後に求められるヒーロー像なのではないか。
「そうかもしれないですね。地震や津波だけでなく、福島の原発問題は今なお現在進行形で、被害に遭い続けている。それは、戦争が終わったのか終わってないのかっていう非日常を登場人物が生きている、『日輪の遺産』という映画の、噛み切れなさとも似ています」
3・11以降の日本について考えるうえで、『日輪の遺産』にヒントがあるのだろうか。
「何よりも怖いのは、“大丈夫だ”“そんなこと考えなくていいんだ”と、不安に自分で封をして思考停止しちゃうことですよ。今必要な態度は、きちんと思考中であると同時に、目の前の具体的な作業をすることだと僕は思っています。その補助線としてこの映画を見ると、また違う味わいがあるんじゃないでしょうか」
(ダ・ヴィンチ8月号 STUDIO INTERVIEWより)