俺はなぜ、ブラをつけているんだ…。「女性のマネ」に目覚めた男子大学生の性的倒錯ストーリー

マンガ

公開日:2016/5/30


『ララぱらふぃりあ』(小乃ヒロキ/少年画報社)

「俺はなぜ、ブラをつけているんだ……」

 女性にとっては必需品のブラジャー。それを着けたいと思う男性の気持ち、正直、理解ができないと思っていた。女装をするのが趣味なのか(女装はしても下着は男性のママという人もいるようだし)。それとも単純に性癖なの? どちらにせよ、ブラジャーを着けたい男性の気持ちは分からない……と思っていた。このマンガを読むまでは。

 『ララぱらふぃりあ』(小乃ヒロキ/少年画報社)は、デンパ系女子高校生に迫られ、ブラジャーを着けてしまったことから、「女性に陶酔したい」という性的倒錯を抱くようになり、「女の子しかしないこと」にハマってしまった男子大学生のアブノーマルストーリーだ。

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 平凡大学生の宮森純(みやもりじゅん)は、予備校塾でアルバイトをしている。その生徒の静流(しずる)は、生徒会長をしている品行方正、成績優秀な女子高生。しかし、そんな静流から、ある日突然「いらないんで」とブラジャーを渡される。

 戸惑いながらも、押し切られるままにブラジャーを受け取り、家に持ち帰ってしまった純は、試しに……と、ブラジャーを着けてしまった。その瞬間、彼の中の「普通」は死んだ。ブラジャーを着けた自分が女の子に見えてきて、「もっと女性に近づきたい」と思うようになってしまう。それから、優等生のフリに飽き飽きしている静流の欲望に振り回されるまま、様々なアブノーマルな行いに手を染めてしまうのだ。

 なるほど、「もっと女性のことを知りたい」という気持ちでブラジャーを着けているのか。それなら納得ができる。

 本書は基本的に青年向けだ。男性の方は「ブラジャーを着けた男が出てくるマンガなんて読みたくねぇよ!」と思うかもしれないが、安心してほしい。純が女性的な行動をしている際には、純の心象イメージの女の子姿が描かれている。なので、ブラジャーを着けるだけでドキドキしている女の子や、女子トイレで用を足すシーン(本当は男性の純だけれど、絵柄は女の子)などのアブノーマルなお色気シーンが読める。

 その他に、パンティーをはいたり、足の脱毛を行ったりと、純の「女の子しかしない行動」が様々に描かれている。本書は「男性目線」からの「女の子の不思議」がテーマになっているようだが、それを「女性目線」で読むのも面白い。つまり、女性読者でも楽しめるのだ。

 特に脱毛テープを使った脱毛シーンなどは、作業の工程や痛みの描写がとてもリアルに感じる。純自身は「傷つきながら美しくなっていくなんて……」と女性の美に隠された「痛み」に興奮を覚えているようだ。女性が読むと「そうそう痛いんだよね! でもそれを男性はそう感じるのか!」という発見が面白い。

 純を惑わせた女子高生・静流の他に、本作では静流のメイドのさやかや、純の隣に住むOL尚美、同じ大学の同級生・優和など、様々な女性が登場する。優和は純に片想いをしているほんわか女子大生で、尚美は純の脱毛シーンを盗み見てしまう強気なおねえさん。そしてさやかは巨乳で積極的な女性だ。

 そんな女性たちに取り巻かれる純。タイプの違う女性がよりどりみどりのハーレム状態は青年向けマンガではお馴染みだと思うが、本作の変わったところは「純が周りの女性に興味がない」ことだろう。

 女性に興味がないわけではなく、「女子に近づく行為をすることで、もっと女性に陶酔したい」と考えている純は、今は生身の女性ではなく「女性のマネ」に一番の興奮を覚えるのだ。そんな倒錯具合もこの物語の魅力だ。

 男性が読んでも女性が読んでも面白い。そんな青年マンガは少ないと思う。怖いもの見たさで、一度手に取ってみてはいかがだろうか。

文=雨野裾