J.Pホーガンの傑作『星を継ぐもの』が21世紀仕様でマンガ化!

マンガ

公開日:2011/9/5

 西暦205X年、月面の洞窟内において宇宙服をまとった奇妙な遺体が発見された。調査の結果その遺体は約5万年前のものと判明する――。
  
 本年2月より『ビックコミック』(小学館)誌上にて連載され、第1巻が刊行された星野之宣さんの最新作『星を継ぐもの』(同)は、未来世界を舞台としたミステリータッチのSF作品だ。原作は、イギリスの作家J.P.ホーガンが、1970年代から80年代にかけて発表した、SF史上に残る傑作シリーズだ。
  
 「マンガはあくまで絵で見せていくもの。ややこしい議論は省略して、結果を描いていくように心がけています。長年にわたって書かれたホーガンの3部作は、まとめて詳しく読むといくつかの矛盾に気づくんです。そこでマンガ版は、早めに伏線を張っておこうとか、再構成を加えています」と星野さん。約30年前に発表された原作を21世紀の読者にも違和感なく楽しめるようにアップデートしているという。
  
 「月で発見された遺体は果たして人間なのか、という議論があるんですが、現代ならDNA鑑定ですぐに結果が出てしまいます。それではミステリーにならないので、遺体が火災で失われるという、原作にはない展開にしました」
  
 また星野版『星を継ぐもの』では、原作以上に人類の過去についてページが割かれている。
  
 「最近の研究によれば、氷河期の人類はほとんど絶滅寸前だったといわれています。細々と生命のバトンをつないで、今日の繁栄がある。『星を継ぐもの』では、そうした人類の歴史をあらためて問いただしてみたいな、という思いがあるんです」
  
 単行本第1巻の刊行に続いて、星野さんのSF系作品を纏めた傑作選が今月から3カ月連続で、小学館から刊行される。華麗な想像力とリアルな未来予測とが緊密に結びついた星野SFの真骨頂を、この機会に是非味わってみてほしい。
  
(ダ・ヴィンチ9月号 今月のブックマークより)