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第17回 チンチン出すタイミングの難しさ/瀧上伸一郎(流れ星)連載

瀧上伸一郎(流れ星)「肘神様が生まれた街」

東京に出てきて色んなバイトをやりました。
一番思い出に残っているバイトは六本木でやってたサパークラブ。
え? サパークラブって知らない?
お客さんをトークで盛り上げたり、カラオケ歌うお客さんを手拍子や合いの手で盛り上げたり、ホストみたいな仕事です。
この頃流れ星のつかみのネタで

ちゅうえい 「当店のナンバー1です!」
瀧上「ホストじゃねーわ!」

っていうやりとりがあったんですけど、ホストじゃねーわと突っ込みつつ、バイトはほぼホストやってました。

ホストと違うのは、ホストのお客さんは女性だけど、サパークラブの場合は男性も来る所。
なんならキャバクラの女の子をアフターで連れてくる男のお客さんがメインだったりします。
このバイト先に、元ブラジル代表の大渡さんという先輩芸人が働いていて、大渡さんに紹介してもらう形で働き出しました。
この大渡さんという先輩は本当にぶっ飛んでいました。
お客さんを接客中、
「すいません! トイレ行ってきます」
と言って帰って来たら、全裸になって帰って来たり、床にラー油を塗って全裸でブレイクダンスをしたり。とにかく笑いの為なら何でもやる人でした。
僕は当時、フォークダンスDE成子坂さんみたいなシュールで格好良いお笑いに憧れていたので、大渡さんみたいな身体を張ってやるお笑いは簡単に笑いがとれる邪道な笑いのような気がして、あまり好きではありませんでした。
そんな時、大渡さんに
「おい! お前も脱げ!」
と言われました。
僕はとっさに
「いや、僕そういうお笑いは苦手なんですよ」
と言って断ったら、

「お前の場合ただ脱ぐ事が恥ずかしいと思ってるだけだろ。お笑いから逃げてんじゃねーぞ!」

衝撃が走りました。

確かに僕は単純にチンチン出すのが嫌なだけで、あーだこーだ屁理屈こねてるだけでした(いやチンチン出すのは大分嫌な事やけども!)。
経験しても無いのに何を偉そうにお笑い語ってんだ僕は、恥ずかしい!
チンチン出すより恥ずかしい!(いや、チンチン出す方が恥ずかしいから!)
ハンマーで頭をガツーンとブン殴られた感覚。
この日から僕は自ら進んで脱ぐようになりました。
実際脱ぐようになって分かった事があります。

脱ぐタイミング。
脱ぐスピード。
脱いだ後の一言。
そして何よりチンチンを出す事による羞恥心に打ち勝つ強靭な精神力。
これらが揃った時に笑いが生まれるという事。

“脱ぎ芸”なんて簡単じゃん! なんて思っていた自分をブン殴りたくなりました。

それからは大渡さんみたいな“脱ぎ芸”を早く身につけたいと思うようになり、この時期サパークラブでほぼ毎日脱いでいたと思います(ただの変質者だよね!)。
でもなかなか大渡さんが脱いだ時くらいの笑いはとれません。

「トイレ言ってきます」

大渡さんが接客中にこのセリフを言ったら、
僕やお客さん、他のバイトしてる芸人は大渡さんの出てくる姿に期待します。
でも、毎回トイレから出てきて全裸になってるだけだったら笑いは弱くなります。
でも大渡さんは毎回期待に応えてくれました。
全裸にトイレットペーパーをグルグルに巻きつけてきたり、色んな小道具を使って笑わせてきます。
そして、筋肉ムキムキで厳つい大渡さんのチンチンが凄く小さくて先端がドリルみたいになっているその落差が何より面白かったです。
全裸で便所ブラシで歯を磨きながら出てきた時は腹がよじれる程笑ったし、笑いの為ならなんでもやる姿勢に感動すら覚えました。
いつの間にかこのサパークラブは芸人が芸人を呼んで芸人が沢山働いていました。
僕以外にも芸人が沢山いるからバイト中も芸人でいられました。
社長や店長には迷惑掛けたけど、最高の環境だったと思います。
その中にジャガーズのちーやんもいました。
ジャガーズはジャニーズのモノマネで最近テレビで沢山出るようになって本当に嬉しいし、テレビ局の楽屋で会うとサパークラブ時代を思い出して変な感じがします。
そして、あんなにお客さんや従業員から爆笑をとっていた大渡さんはお笑いを辞めました。
でも今でも僕なんかより面白いと思うし、尊敬しています。
芸人はパチンコ台みたいなもんで、出る台(芸人)もあれば出ない台(芸人)もある。
運が殆どの世界で、お笑いをダラダラ続けるよりも辞める勇気を持った人の方が僕は賢いと思います。
大渡さんは芸人という世界からの“引きギワ”もチンチンを出す“出しギワ”も完璧でした。
大渡さんを思い出しながらこの文章を今、全裸で書いています。

 

 


 

 



『瀧上伸一郎(流れ星)「肘神様が生まれた街」』

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