社会

改憲に突進する安倍自民党。あなたは賛成?反対? 『スターバックスでラテを飲みながら憲法を考える』


『スターバックスでラテを飲みながら憲法を考える』(松井 茂記:編/有斐閣)

「憲法改正に向けて全力で取り組みます。」(※1)

 これは、日本国憲法を在任中に改正すると明言している安倍首相の言葉である。

 忘れもしない2015年9月19日、安全保障関連法案(安保法案)が国会で与党により強行採決されて成立。そのなかの「集団的自衛権の行使」が憲法九条違反だと、憲法学者はじめ多くの国民がいくら反対しても、安倍流“憲法解釈”で事は強引に進められていった。 歴代政権が憲法施行から68年間守り続けてきた日本の平和主義が、首相個人の解釈ひとつで終わってしまったのだ。

 安倍首相は、「夏の参院選で改憲勢力3分の2を確保し、2018年9月までの自民党総裁任期を念頭に国会発議と国民投票による実現をめざす考え」を示しているという(※2)

 安倍首相の計画通り、憲法改正に向けた国民投票が実現したら、私たちは改憲すべきか否かの決断に迫られる。

 そこで読んでおきたいのが、『スターバックスでラテを飲みながら憲法を考える』(松井 茂記:編/有斐閣)だ。

 法曹や法学部の学者、学生以外、憲法を目にする機会はまずないと思うが、その条文を細かくみていくと私たちの生活と深く結びついているものが多い。

 本書はその一部をわかりやすく伝えるため、さまざまな工夫を凝らしている。まず親近感を抱くタイトルと装丁が目を引く。目次を見ると、11人の憲法学者がそれぞれ憲法に関わる現代社会の問題を提起。ページを繰ると、スターバックスでラテを飲みながら話しているような雰囲気で、憲法について考えさせられる議論が展開していく。

 例えば、第1章の「安らかに死なせてほしい――尊厳死の権利および安楽死の権利」。医学の進歩によって延命治療が発達しているが、「回復の見込みもないような場合、いっそ楽に死なせてほしい」と思った場合、憲法は尊厳死および安楽死を認めているのだろうか? と投げかける。答えはノーで、刑法の自殺幇助および同意殺人罪の禁止規定が大きな障害となっている。しかし、憲法は基本的人権を保障しており、そこには第十三条「生命、自由および幸福追求に対する権利」が認められている。つまり死を選ぶ権利も、「自由および幸福追求に対する権利に含まれると言えるのではないか?」(p11)と著者は解釈する。

 第2章は、「死者の個人情報の行方  ――死者とプライバシーの権利」だ。ある日突然、死んでしまった人は、使っていた電子メールやSNSの情報がインターネット上に残る。その場合、死者のプライバシーの権利はどこまで保護されるのか? 死者のプライバシーを死後公表すると、刑法が定める名誉毀損罪は成立するのか? ここでは法律を学ぶ大学生二人の会話形式で、いじめが原因で飛び降り自殺したと噂される中学生の例や、実際に訴訟が起こされた判例をもとに話が展開していく。

 そのあとも、第3章「憲法はアイヌ民族について何を語っているのか――個人の尊重と先住民族」、第4章と「イメージ一枚で4億円?――チャイルド・ポルノグラフィ抑止の値段と表現の自由」など、関心を引くテーマが続く。なかでも熟読すべきは、やはり第10章の「集団的自衛権は放棄されたのか ――憲法九条を素直に読む」だろう。

 単純に、「九条=戦争放棄」と単純に 思っている人がこの章を読むと、目からウロコが落ちるかもしれない。なぜなら、「国連安保理決議に基づいて他国を空爆することも、人道上の目的から、安保理決議なくして、他国領域内の過激派根拠地を空爆することも、国際紛争を解決する手段でなければ合憲です」と言い切っているからだ。その解釈にいたるまでの根拠は、ぜひ本書を読んで確かめてみてほしい。

 毎日新聞の調査によると、憲法九条の改正には52%の人が反対し、賛成派と拮抗している(※3)。ではなぜ改憲に反対するのか? しないのか? 本書はその是非について改めて考えるいいきっかけになるはずだ。

※1 自由民主党・安倍晋三ホームページ「憲法改正」より
※2 2016年3月3日朝日新聞デジタルより
※3 2016年5月3日、毎日新聞発表の世論調査より

文=樺山美夏



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