USJの快進撃を生んだ森岡氏が実証! 「マーケティング」に向いている人の4項目とは?

ビジネス

公開日:2016/6/15


『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方――成功を引き寄せるマーケティング入門』(KADOKAWA)

 読後、とにかく熱くなる。一つの信念が多くの人の思いを集め、怒濤のようなものになっていくさまを再体験。成功を引き寄せる人のパワーが実感できる。周囲の温度が数度上がったのでは? と思えるぐらいだ。だがそれは著者の情熱を感じたからだけではない。「マーケティング思考」を知り、それに引き込まれたわくわくした気持ちだと、のちに気づかされる。

 『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方――成功を引き寄せるマーケティング入門』(KADOKAWA)の著者・森岡毅さんは、1972年生まれ。神戸大学経営学部卒業後、P&Gを経て、2010年にUSJ入社。2012年からは同社CMO(チーフ・マネージメント・オフィサー/マーケティング最高責任者)、執行役員、マーケティング本部長。

 USJ (ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)は、大阪市にあり、2001年に開園。ハリウッドの超大作映画をテーマにした「ハリー・ポッター」のライドや人気キャラクターたちのショーなど、子どもから大人まで楽しめる、ワールドクラスのエンターテイメントを集めている大人気テーマパーク。2015年10月には過去最高の月間175万人を集客し、単月ながら東京ディズニーランドを抜き、集客数日本一のテーマパークとなった。

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 しかし過去には2004年に業績不振から、なんと経営破綻している。その後、経営再建したものの低空飛行を続けていたが、2011年秋には「ハロウィーン・ホラー・ナイト」を仕掛けて大当たり!! 経営は急速にV字回復。2014年からは「ハリー・ポッター」関連事業も大ヒットしている。

 なぜUSJはそこまで劇的に変わったのか? 改革のキーマンはまさに著者・森岡さんとそのマーケティング思考と人を動かすパワーだ。これを隅々まで徹底させてイベントを仕掛けるさまは、読んでいるだけでわくわくさせられる。

 たとえば、閑散期といわれる1~2月に、旧正月や学生の長期休暇を見込んで、「エヴァンゲリオン」や「進撃の巨人」など海外でも人気の日本のアニメ・マンガ等のコンテンツかを取り入れた「ユニバーサル・クールジャパン」イベントを、2015年から仕掛け、結果は……大成功!! 2月は前年比4割以上の集客があったという。徹底したマーケティングの勝利だ。

 徹底マーケティング→仕掛け→人々の心を動かす→成功確率アップ。マーケティングは好循環を生むのだ。本書では彼がこれまで培ってきたノウハウを解説。この仕事に向いている・いない人 、キャリアの作り方等々、高校生にも理解できるようにわかりやすく語られている。

 特にこの仕事(マーケター)に向いている人を4項目で挙げているのは興味深い。
(1)リーダーシップの強い人、(2)子供の時から要領が良い人、(3)流行りものに対する興味の深い人、(4)精神的にタフな人……である。

 だが、これらの特徴を全て備えないといけないわけでなく、どれかが当てはまれば、その特徴を活かして成功する可能性が大いにあるという。

さらに森岡さんは言う。
「USJが変わったのは一つだけ。それはマーケティング主導の組織になったこと」
「マーケティング思考を理解できれば、どんな組織も劇的に変わる」。

 CMO(マーケティング最高責任者)を現在導入している日本企業はまだ少ないという。今マーケティング思考を身につければ、日本も変えられるかもしれない。狙い目の技能なのだ。現在企業にいても組織を変えてみたい人、就職活動中の人、いずれする人は特に必見。彼の語る「マーケティング思考」の極意は、体験も含まれており、とにかく面白い。明るく、楽しい気分にもなるビジネス書だ。

文=塩谷郁子