“萌え”も“ツンデレ”もいらない 新人作家、あやめゆうのラノベに注目!

マンガ

公開日:2011/9/5

 妖精郷スシォルロントを舞台に繰り広げられる壮大なおとぎ話『RINGADAWN(リンガドン) 妖精姫と灰色狼』(中央公論新社C★NOVELS Fantasia)は、著者あやめゆうの夢の中から生まれたという。  
  
 「このお話に出てくる重要なモチーフの“湖に半分沈んだ船”が、ある晩の夢に出てきたんです。だから、いつか使おうと思って」。 こう聞くと、さぞ夢見がちな人物かと思ってしまうが、本質はリアリスト。  
  
 「書くならラノベがいい。読者が分かりやすく楽しめるジャンルだから。とはいえ“萌え”や“ツンデレ”のような方向にはせずに勝負したくて」  あやめゆうは本作品で、第7回C★NOVELS大賞特別賞を受賞。第2回から6年間も応募し続け、ほぼ毎年最終選考まで残っていたため、編集部内でも話題の応募者だった。  
  
 過去の応募作品でも今作でも、一貫して大事にしているのは“嘘くさくならない”ことだという。 「ちょっとだけ救いや希望がある、っていうのがいいんです。主人公が好き勝手やって、恵まれていて、周りもちやほやしてくれて、なんてリアルじゃなくて納得いかない(笑)。だから、今回の作品もファンタジーというジャンルでありながら、そのあたりは大事にしました」  
  
 逆に『妖精姫と灰色狼』でファンタジー性を意識した箇所とは?  
  
 「どの登場人物も“潔さ”を大事に書きました。それぞれ、自分がこうする、と決めた使命があるのですが、そこに一直線に動き、それ以外には無頓着。こんなことを実際にやってしまったら、社会生活を送れなくなりますから、ファンタジーならではですよね(笑)」  
  
 舞台が妖精の国だろうと現代だろうと、リアリストならではの視点から紡ぐビターな書き手の登場だ。  
  
(ダ・ヴィンチ9月号 注目の新進作家より)