鉄の処女VS野獣のオフィスラブ!純情と官能が同居する『野獣は激しく奪う』 

マンガ

公開日:2016/6/22


『野獣は激しく奪う』(水谷京子/白泉社)

 初エッチとか結婚とか年を重ねていれば自然にできるものだと思ってた――。

 なんて思ってるアラサー女性は案外多いんじゃなかろうか。学生時代はまじめでオクテ。働き出したら仕事に忙殺され続け、おひとりさまを楽しみ続けて気づけば三十路目前、鉄の処女!な商社OL・有紗(29歳)。知れば男も引くはずと恋にますます臆病になり、誰にも相談できず、焦る心が募るばかりな有紗の世界を、一変させてくれるのが社内一のモテ男・野獣の赤城。鉄の処女VS野獣の、純情と官能が同居した大人ラブコメが『野獣は激しく奪う』(水谷京子/白泉社)だ。

 赤城は世の働く女子が思い描く理想の男そのものだ。イケメンなのは大前提だが、副社長の姪と結婚している時点でやり手なのは想像がつくし、離婚してもむしろ会社から引き留められるという評価のされっぷり。ガンガン攻めてくる俺サマ男、かと思いきや激しいのはベッドの上だけで、基本的には女性を尊重してスマートに扱うし、激しいって言ったって自分本位なわけじゃなくてちゃんと女の人を気持ちよくさせてくれるという百戦錬磨のテクニシャン。初体験の相手にはもってこい、っていうかむしろ最初にそんな男とつきあっちゃったらもう他の男なんて霞んで視界に入らないよ! というデキすぎた男ですが、そんな男に甘やかされ、仕事では厳しく指導され、そしてふたたび溺愛され、な飴と鞭を堪能するのがこのマンガの醍醐味。いうなれば現代日本版・マイフェアレディなのです。

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 恋をすると女性は確かにきれいになる。それが幸せな恋ならなおさら。満たされて自然と表情がきらきら輝き、内面から放つ自信がますます女性を美しくしていく。そのかわり、相手次第であっというまに醜くなってしまうのも恋愛のこわいところですが、赤城の言動に一喜一憂して花開いていく有紗の姿は女の目から見てもかわいいしいじらしい。かわいいと思われたいから見た目にも気を遣うし、がっかりされたくないから仕事はしっかりとこなし、優先順位はまちがえない。控えめにふるまいはするも、言うべきことはしっかり言う。そんな有紗だから、手軽く遊べる女がいちばん、なんて思っていた赤城も心を奪われ、次第にめろめろになっていく。いいなあ、こんな恋愛がしたいなあ、と素直に憧れられる2人だから、その先をどんどん追いたくなってしまいます。結局4巻になるまで最後の一線を越えない2人のじれったさもよい! なんだかんだ主導権は有紗が握っているというのも、女子の夢を体現しています。

 とはいえ野獣・赤城なので。無意識のフェロモンは周囲の女を片っ端から虜にしますし、なぜ離婚したのかの謎も明かされていないので、今後、元嫁が登場することも予想されますが、恋の鞘当てにはらはらしつつ、最終的には官能にもつれこむ2人の駆け引きを堪能していただければと思います。

文=立花もも