人間関係のストレスをなくし、他人の潜在意識に働きかけて場を支配する「60のテクニック」

暮らし

公開日:2016/6/23


『影響力の心理~The Power Games~』(ヘンリック・フェキセウス:著、樋口武志:訳/大和書房)

 自分の意見がないわけではないけれど、いつも人の言うことに従ってばかり。人に何かお願いしたり、協力してもらえないか頼んだりできず、結局ひとりで抱え込んだまま相談すらできない。まったく人と話せないわけではないが、どうすればよいのかわからないし、質問もできない――。

 では、どうすれば人に自分の意見をうまく伝えられるだろうか。そして、だれかに動いてもらうには、どのように伝えればよいのか? そのヒントやテクニックが『影響力の心理~The Power Games~』(ヘンリック・フェキセウス:著、樋口武志:訳/大和書房)には約60個紹介されている。ちなみにこの本は、世界14ヵ国で刊行・翻訳されているベストセラーだ。

 著者は本書について、人間関係におけるストレスをなくし、その場の流れを自分の望む方向に導くことのできる「影響力」について書いた本だ、と語っている。また、人の無意識の領域にある「人の感情と振る舞い」に影響を与え、他人の影響力に流されず、自分の考えを保持する方法を書いた、ともいう。具体例を挙げてみよう。

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 第1章「影響力の仕組み」に「弱みを見せたほうが信頼される」という項目がある。ネガティブな側面を些細なことだと言い張るのではなく、相手に指摘される前に自ら打ち明けつつフォローを入れると、親切な印象を与えられるというもの。「このチリソースはとても辛いので、かけるなら少量にしたほうがいい」といった具合に。ちなみに、弱みをフォローするときに長所も説明すると、その長所が引き立ち、より効果が上がる。

 たしかに自分の思うようにまわりを動かす「影響力」やその方法について書かれている。しかし引っかかるのは、紹介されている方法がどのように人の心に作用するのか、なぜ思ったとおりになるのか、といった裏付けについて、ほとんど説明されないところだ。こう言われると人はこう感じるから、こんな風に言えばいい――ある局面でとるべき言動はわかっても、なぜその言動が有効なのかわからず、説得力に欠けるというのが正直な感想だった。

 とはいえ、著者自身が結びの文で述べているように、本書に書かれたすべてのテクニックが読者に適しているとは限らない。この本を読んで学んだことを自分の日常に落とし込んでいき、必要と思われるものをうまく修正しながら活用していくのが、この本の正しい使い道である。実際、知っているだけでその日からすぐに実践できるものがほとんどだから、実用性が高いことはたしかだ。

 もし家庭や職場・学校で「あの人との会話はなんとなくギクシャクする」「他人の意見に従うばかりでいたくない」と感じることがあるのなら、つい読みたくなる項目が見つかるだろう。たとえば私は「使ってはいけない6つの地雷言葉」(第2章)とか「『贈り物の価値』は渡し方で変わる」(第3章)などの項目が気になった。1項目2~5ページ程度と読みやすいので、まずは目次で気になった箇所から目を通すのがいいかもしれない。

文=上原純(Office Ti+)