お客様に愛される人はどこか違う! サービスの達人がプラスで提供しているものとは?

ビジネス

公開日:2016/6/27


『サービスの達人たち 究極のおもてなし』(野地秩嘉/新潮社)

 お客様に対してサービスを提供する仕事をする人の中には、お客様の心をわしづかみにして離さない魅力を持った人がいる。そのような人は他の人とどこが違うのだろうか? 接客の達人たちの心がけは、新入社員が研修を終えて実践的な接客や営業を始める際の参考になるかもしれない。そこで、サービスの達人たちのおもてなしがわかる本『サービスの達人たち 究極のおもてなし』(野地秩嘉/新潮社)を取り上げる。

物が同じでも売れたり売れなかったりするのはなぜ?

 接客やセールスにおいて、売るものは同じなのに、人によって売れたり売れなかったりするのはなぜだろう? 本来欲しい物が手に入ったり必要なサービスが受けられたりすれば、お客様にとって担当は誰でも構わないはずだ。それでも人によって売れたり売れなかったりするのは、担当してくれた人によって言葉の選び方や細やかな心遣いが違うからだろう。気持ちよく買い物ができたり、快適に過ごせたりしたら、お客様は何度もそこに足を運びたくなるし、次もその人の接客を受けたくなる。それができているかいないかの差が売り上げの差になっているのだ。

日本で最多のベンツを売り上げたセールスマンの極意

 飛び込みのセールスマンは下手をすればただの招かれざる客になってしまう。そんな中、1台当たりの単価が高いベンツを年間100台以上売り続けた敏腕セールスマンがいる。日本一多くのベンツを売り上げたヤナセの河野 敬氏 だ。彼は「待ちの姿勢ではセールスはできない」という。「このセールスマンから買う」と思ってもらえるセールスマンになるためには、自分からお客様に近づいていく必要があるというのだ。とは言っても、一気に距離を詰めるような強引なまねはせず、忍耐強く何度も通い、少しずつ距離を詰めていくことが大事だ。そして、たとえお客様と親しくなったとしても、適度な距離感を保ち続けるのがポイントなのだ。そのうえで、セールスマンの方からどんどん情報を出していくのではなく、お客様からさまざまな情報を引き出し、お客様自身が欲しいと言い出すタイミングを待つセールスの仕方をするのが彼の極意だ。毎年飛び込みで新規のお客様を10人以上増やし続けた河野氏は、お客様に売った車の車種や色をしっかりと覚えていた。そして、今では部下が売ったお客様の顔や車種まですべて把握しているというのだから、達人はやはり違うと唸らざるを得ない。

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相手が欲しいサービスを提供するのが達人!

 接客や営業の仕事をするうえで、売上アップだけを考えてしまうと、「自分がしたいサービス」をしてしまうことがある。相手に良かれと思うことはすべて押し売り気味にしてしまうパターンだ。しかし、「これだけのことをやっているのだから喜んでくれるはず」という気持ちは、意外とお客様には見透かされてしまう。「自分のためにやってくれていること」とお客様が感じるか、「売り上げを上げるためにやってくれているだけだろう」と感じさせてしまうかという違いは大きい。だから、お客様が本当に欲しいサービスを見抜いて提供できる人が達人と言えるのだ。

文=大石みずき