羽海野チカとおかざき真里が語る「女のマンガ道」

マンガ

公開日:2011/9/5

 『ハチミツとクローバー』『3月のライオン』の羽海野チカと、『サプリ』『&-アンド-』のおかざき真里。お互いにファン同士という人気女性マンガ家二人が、「女子ならではのマンガ道」について語り合った。
  
 「おかざきさんがすごいなと思うのは、お子さんが3人いらっしゃいますよね。子育てをしながら、“どうやってあのマンガのクオリティを!!”と思って。最近は、私の好きな女性マンガ家さんでお子さんいらっしゃる方が増えてきて。私はみんなより時間があるのに、みんなよりクオリティが下がってしまったら“合わせる顔がない!”と思うんですよ。みんなは家族も背負って頑張っているのに、私は自分のことだけで一杯いっぱいになって、自分ひとりの身さえ持て余して“情けない!”って思って……」(羽海野さん)
  
 「確かに、女子のマンガ道って難しいですよね。私は物理的にマンガのための取材等に割ける時間は限られている。マンガのためにもっと時間を作りたい、クオリティを上げるためにやれることはなんでもやりたいって思うけど、そうはできない中で工面して描くしかなくて、もどかしい気持ちになることもあるんです。もしも今ひとりだったら……逆にクオリティが下がるかもとも思うんですけれど、私の場合」(おかざきさん)
  
 そんなおかざきさんにも葛藤はあるようだ。
  
 「自分として仕事の仕方はギリギリいっぱいなんですけれど、じゃあ、“母親として、どうよ?”と。母親としての自信がないまま母親業もやらなきゃいけないから、いろんなことが重なって“ワーッ!”となっちゃう時はあります。“私はまだぜんぜんできてない、マンガも、母親も!”とか思うと大変なことになっちゃうので、毎日お酒を飲んであっはっはっはと(笑)。腹が据わるとラクなんですよね、きっと。でも、据わった人のマンガが面白いかっていうと、どうなんでしょう。だって『ライオン』すごく面白いですから!」(おかざきさん)
  
 「“腹が据わらないままでいて”って、お友達にも言われるんです(笑)。確かに、どんなことでもプラスにできる、はずなんですよね。それを今、人体実験しているところなんです」(羽海野さん)
  
 こうした女性マンガ家ならではの葛藤こそが、彼女たちの作品に豊かな深みを与えているのは、間違いないところだ。
  
(ダ・ヴィンチ 9月号「対談 羽海野チカ×おかざき真里」より)