「吉増を体験すれば、もっと自由になれる。」 全身詩人、吉増剛造が熱い注目を集めるわけ

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/14

朗読パフォーマンスをする吉増剛造
Photo: Sayuri Okamoto

いま、「詩」が盛り上っている。
オン・ザ・ロード』のジャック・ケルアックと並ぶビート文学の代表的人物、詩人・アレン・ギンズバーグ生誕90周年を迎える今年、日本でもふたたび詩への注目があつまっているのだ。

中でも、ひときわ熱い注目を浴びている人物がいる。今年に入って『我が詩的自伝 素手で焔をつかみとれ!』(講談社現代新書)、『怪物君』(みすず書房)などの数々の著書を刊行し、さらに今年の秋にはアメリカでも作品集の出版を予定している詩人・吉増剛造氏だ。

ポートレイト(吉増剛造)2009年
撮影:ホンマタカシ ©Takashi Homma

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吉増氏の詩はあまりにもユニークだ。無理に作品全体を理解しようとすれば、個の言葉と音の強烈な引力に足をとられ、もがくこととなるだろう。たとえば、東日本大震災に触発され書き綴られた『怪物君』はこのような書き出しではじまる。

アリス、アイリス、赤馬、赤城、、、、、、
イシス、イシ、リス、石狩乃香、、、、、、
兎! 巨大ナ静カサ、乃、宇!

―― 『怪物君』より

現在、東京国立近代美術館で開催されている吉増氏の展覧会、『声ノマ 全身詩人、吉増剛造展』ではこの『怪物君』が綴られた直筆の生原稿の一部をはじめ、吉増氏の現在に至るまでの作品が展示されている。

<怪物君>より 2014年
Photo: Kioku Keizo ©Gozo Yoshimasu

<裸のメモ>より(部分) 2013年
©Gozo Yoshimasu

《わたしたちはだれもが優れた楽器なのだ》制作年不詳
©Gozo Yoshimasu

《沖縄の炭抗夫さん》制作年不詳
Photo: Kioku Keizo
©Gozo Yoshimasu

日記、写真、銅版、映像……、現在77歳にして、今なおその表現を鋭敏に研ぎ澄ませ現代詩の世界を破壊し拡張させる日本現代詩の巨人。その音と言葉の奔流に揉まれながら、私たちが普段住まう「意味」の世界をゆさぶられる体験をしてみるのはいかがだろうか。

 

<声ノマ 全身詩人、吉増剛造展>

会期:2016年 8月7日(日)まで
会場:東京国立近代美術館 1階 企画展ギャラリー
主催:東京国立近代美術館
開催時間: 10:00~17:00 (金曜は20:00まで、毎週月曜は休館日 ※7月18日は開館し7月19日休館) 入館は閉館の30分前まで
観覧料:一般1000円、大学生500円、いずれも税込み。高校生以下は無料。

7月16、17日には同館地下1階の講堂にて、ジョナス・メカス監督『リトアニアへの旅の追憶』、7月23日には吉増氏主演の伊藤憲監督『島ノ唄』の映画上映会も開催される。16日、23日には吉増氏によるアフタートークも予定。