昨日上司に怒られたこと、まだ引きずっていませんか? クヨクヨする気持ちを切り替えて前向きに生きる方法

暮らし

公開日:2016/7/5


『「引きずらない」人の習慣』(西多昌規/PHP研究所)

 失敗をしても「まぁいいか」とすぐに立ち直れる人もいれば、いつまでもクヨクヨと引きずってしまう人がいる。あなたはどちらのタイプだろうか。『「引きずらない」人の習慣』(西多昌規/PHP研究所)の著者は精神科医で、何人ものクヨクヨする患者を診てきた。本書には、さまざまな「引きずらない」方法のエッセンスが詰まっている。

 いつまでも終わったことをクヨクヨ引きずるのは、気持ちが疲れるばかりで何もいいことはない。そうわかっているのに、やめられないのはどうしてだろう。本書によると、人間はイヤなことほど「忘れない」ようにできているらしい。それは、古代から受け継がれた脳の仕組みによる。脳には、不安や恐怖を感じる「扁桃体」という部分がある。この部分を切り取ったサルは、コブラやライオンなど自分より強い敵にも平気で近づいてしまうという。

恐怖や不安を感じて、ちゃんと覚えておくことは、生物の生き残りのためにも絶対に必要なことなのです。

 ネガティブなことほど印象に残るのは自然現象であり、意志の強さとは関係ないのだ。そうはいっても、負の感情を抱え続けることは精神的に負担が大きい。著者によると、クヨクヨすることは避けられなくても、その感情をいつまでも「引きずらない」ことはできるという。

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 引きずるタイプの人には、引きずりやすい思考グセがみられるそうだ。たとえば完璧主義で、白か黒かの二択で考えるクセ。8割がうまくいったとしても、2割の失敗の方に気が向いてしまう。自己評価が低く、失敗しないようにビクビクしながら行動を起こすので、かえってうまく いかない。「8割できたらOK」「グレーでも良し」と楽観的に考えることで、生きづらさも解消されるだろう。

「あのときこうしてたら」「あそこでこうしてれば」といった「たられば思考」も、引きずりやすい思考グセであるという。自分が選ばなかった選択肢について、未練がましく色々想像をめぐらせてしまうのは、誰しも経験があるはず。過去への後悔と手に入ることのない未来を心がさまよっている状態は、まさに「心ここにあらず」。大切な今をないがしろにしてしまっている。著者によると、やった選択よりやらなかった選択の方が、強く後悔を残す傾向があるという。なんとなく迷っているなら、思い切ってチャレンジした方が気持ちもスッキリしそうだ。

 著者は、「何が何でも引きずるな」と言っているわけではない。引きずるに値しない些細な出来事もあれば、愛する人の死などすぐに気持ちを切り替えられない出来事もあるだろう。何かダメージを受けた時は、すぐに引きずりモードに入るのではなく、そのダメージをどう扱うかいったん冷静になってみるのもいいかもしれない。著者がおすすめする方法は、悩みを「パーキングさせる」というもの。アスリートも行っている方法で、悩みをいったん頭の一部に「一時停車」することによって、ミスにミスを重ねてしまうのを回避できる。パーキングした悩みは、後からゆっくり分析して次の成功へ生かすこともできる。また、答えが出てもどうしようもない悩みは「前向きにあきらめる」方法もあれば、悩みに火がつくきっかけに近づかないよう「スルーする」方法もある。そして時には、思いっきり悩むことで脳も悩み続けることに飽きてくるという。

完全に「引きずらない」人になることがゴールではありません。「引きずる」つらさを、前に進むエネルギーに変えていくことが目標です。

「どんなことも100%引きずらない」と決めてしまうこと自体、完璧主義の思考グセに陥っているといえよう。「引きずっては切り替える」ことを何度も繰り返せば、メンタルもだんだん強くなっていく。生きていれば避けられないたくさんの「つらいこと」も成長の糧にして、前に進みたい。

文=ハッピーピアノ