LINEより手紙!「ラブレター代筆屋」の仕事とは? 言葉にできない想い、伝えます

恋愛・結婚

公開日:2016/7/11

 SNSの普及に伴い、人は以前より簡単に想いを伝えられるようになった。若い世代の間では、LINE上での告白も珍しくない。しかし、便利になった一方で“書いて伝える”という伝統的な行為からはどんどん遠ざかっている。

 そんな時代の流れに逆行するかのように、「ラブレター代筆屋」という仕事を始めた男性がいる。その日々を綴った手記が、『ラブレターを代筆する日々を過ごす「僕」と、依頼をするどこかの「誰か」の話。』(小林慎太郎/インプレス)。ストーリー投稿サイト「STORYS.JP」で話題となり、書籍化された。

 本書の中で、著者の小林氏は様々な依頼にひとつひとつ向き合い、ラブレターをツールとして依頼者の想いを形にすべく、奮闘する。それでも、「手紙で想いを伝える」のは簡単なことではない。

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 たとえば、「離婚をなかったことにしてほしい」と依頼してきた50代の男性。3カ月前に離婚し、それ以来元妻とは音信不通の状態だという。メールも電話もダメなら、残るは手紙しかない…。そんな藁にもすがる想いで、ラブレター代筆を依頼してきた。著者は頭を悩ませた末、単に相手への想いを綴るのではなく、2人の幸せな日々の思い出について書き連ねることを決める。

「まず、伝えておきたいことがある。僕のもとに帰ってきてほしい、とは言わない。だから、最後まで読んでほしい…」

 そんな書き出しで、未練があることを匂わせないように細心の注意を払った。それにもかかわらず、依頼者から「僕の気持ちはこんなものではない」と不満をぶつけられてしまう。

 もちろん、うれしい報告もある。

「遠距離恋愛中の彼女にプロポーズをしたい」と依頼してきた20代の男性。彼女とは会社の同期同士で、北海道と東京で約3年遠距離恋愛をしている。付き合った当初、「ラブレターがほしい」と言っていたという彼女に、ラブレターを書いてプロポーズすることを思いついたが、自分ではうまくまとめられず、代筆を依頼した。

「…これからは同じ道を、同じ歩幅で歩んでいこう。僕と君で、同じ人生を生きよう。結婚、しよう」

 これまで離れていた期間を、これからの人生をともに歩むことで埋めていこう。そんな想いが込められたラブレターに、依頼者は大満足。後日、筆者はプロポーズ成功のメールを受け取る。

 ラブレターの代筆は実入りのいい仕事ではないうえに、すべての依頼者に満足できる結果を提供できるとは限らない。期待に応えられず罵倒されることはあるが、感謝の連絡をもらえることはほとんどない。それでも筆者は、「楽しんでやっている」という。自分の仕事が誰かの想いの成就につながることがうれしいと。

 ひとつひとつのエピソードから、依頼者の真剣な想いや、それに応えようとする筆者のひたむきな姿勢が伝わってくる。どんなにSNSが普及しても、手紙でしか伝えられないことはまだまだある。そう思わせてくれる一冊だ。

文=佐藤結衣