「まんが史上最も美しい第1話だ」と話題で売り切れ続出! 30歳OL×12歳少年の交流を描くコミック『私の少年』

マンガ

更新日:2016/8/1

 誰かに心の穴を埋めてほしくて、たまらない気持ちになるときがある。なんとなく物足りなくて、なんとなく寂しくて。そうやって隠し持っていた孤独に、誰かが気づいてくれた時、人は救われた気持ちになるものだ。その相手が、家族や友達、恋人でなかったとしても――。『月刊アクション』にて連載開始するやいなや、「まんが史上最も美しい第1話だ」と話題になった『私の少年』(高野ひと深/双葉社)。偶然出会った30歳OLと12歳の少年の、名づけることのできない関係性を描いた作品だ。

 主人公の多和田聡子は、ごく普通の会社員。職場に学生時代の元カレがいるというのが唯一ドラマチックといえなくもない環境だが、過去の恋愛をなんとなく引きずって、ときどき心を揺さぶられながらもまじめに働く30歳という、一般的な独身女性だ。

 そんな彼女が、夜の公園でひとりリフティングの練習を続ける美少年・真修に出会うのが物語のはじまり。最初はただ、酔った勢いで指導してあげただけだったが、素直でひたむきな彼の姿を見て放っておけなくなり、少しずつ関わるようになっていく。

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 思わせぶりな元カレ・椎川に、婚約者を紹介されたことも契機となる。別に未練を持っているわけじゃない。馴れ馴れしくちょっかいを出されるたび、迷惑に感じていたのも本当だ。……だけどほんのちょっと、「もしかしたら」とどこかで期待していたのだろう。すべてが自分の勘違いだったと気づかされたとき、たまらなくむなしく、恥ずかしくなる。
 そんな、いつもより孤独の深まる夜、真修と公園で再会し、彼が家庭環境に問題を持っていること、そして彼もまたひとり抱えている孤独に気づいてしまったのだからたまらない。彼の存在は聡子の心にぐっと深く入り込む。

 そして真修にとっても、おそらく初めて彼の孤独に介入してくれた聡子の存在は次第に大きくなっていく。

 家族でも友達でもない、もちろん恋人でもないけれど、互いに心の穴を埋め合いながら前進していく2人の関係は唯一無二の特別なものだ。誰かにとって特別な存在になれたとき、人は救われ、癒されていく。その過程のあまりに儚く繊細な美しさに、読み手もまた心を揺さぶられてしまうのだ。

「その関係には名前が付けがたく、なんとももどかしい! そして美しい!!」「悲しいまでに繊細な透明感が刺さるように響いてくる」と早くも読者の心を鷲掴みにしている本作。1巻発売後は売り切れ店が続出し、またたく間に4刷重版とあいなった今最注目のマンガなのだ。

文=立花もも