「大手業者だから安心」が命取り!欠陥マンションを買わないためのポイントとは?

暮らし

公開日:2016/7/13


『新築マンションは9割が欠陥』(船津欣弘/幻冬舎)

 「住宅」購入は一生ものの大きな夢。こんな街のこんな住まいで、こんな風に暮らしたい…希望を思い描く。それゆえ、見た目のよさや住環境のほうに意識がいってしまいがち。だがそれは要注意。

新築マンションは9割が欠陥』(幻冬舎)の著者・船津欣弘氏は、「大手業者だから安心…が命取り」という。国内有数の事業主(不動産会社/ディベロッパー)や建設業者(ゼネコン)が手がけているにもかかわらず、欠陥住宅はなくならない。近年でも横浜市や東京港区での新築マンション建築偽装事件が記憶に新しい。

 なぜ欠陥住宅はなくならないのだろうか?

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「下請け多重のピラミッド構造」「職方と建築技術者の不足」「複数工種の存在」「青田売りによる工期厳守」「ずさんな管理」。これらが複雑にからまりあっているのだ。

 まず、施工会社が「ゼネコン」だといっても、実際に鉄筋工事や電気設備工事を担当するのは、2次3次下請け業者である。彼らは低賃金・重労働・社会保障なしの劣悪な環境のもとで働いている。販売を最優先にした結果、工期はタイトになる。技術習得までには時間がかかるが、未熟な技術のまま、自分たちの工事範囲もわからず放置。現場任せのずさんな管理――施工不備・欠陥はこうして起こっている。問題は幅広く根深い。

 船津氏は、建築検査業務を専門としているプロ。阪神・淡路大震災での被災経験から欠陥住宅問題に取り組みはじめ、2005年の建築物構造計算書偽造事件(いわゆる姉歯事件)をきっかけに専業となり、1000件以上の施工状況検査に従事してきた。それゆえ、本書では、自分が見聞きしてきたずさんな建築現場、不動産業界の実態をいわば内部告発している。だが、批判ばかりではない。巻末には「欠陥マンション診断チェックリスト」とともに、「品質重視のマンション選びチェックリスト」が掲載されている。「買ったマンションに不備はないか、ここだけチェック」や「自分で欠陥を見つける方法」「こんな現象だったら心配なし」で、写真をまじえて具体的な確認場所までさし示しており、大いに参考になる。

 では、欠陥住宅を買わないためのポイントは何なのか?

 結論からいうと、注意するほかない。欠陥は“あること前提”で考えたほうがいいようだ。新築マンションを購入するときは、完成前に入念な検査を自社以外の第三者がすること、その予算をあらかじめ計上していることを確認。契約書は精査すること。また完成後も管理組合活動に積極的に参加すること。欠陥がわかったとき、補修費を負担するゼネコンの経営体力を確認すること――などである。

 また、新築持ち家にこだわらず、ライフスタイルに合わせた住まいの選択も考え、持ち家幻想は捨てるべき、とも。「狙い目の中古物件の条件」も掲載されているので楽しい。

『新築マンションは9割が欠陥』――実にセンセーショナルなタイトルだが、「欠陥」とは、建物の安全性を大きく損なう構造の欠陥だけではない。たとえば断熱施工の不備で結露が発生し、健康被害を受ける人がいる場合も「欠陥」ととらえているのだ。このような「広義の欠陥」は多くの建築物に存在するという。この現実を知ってもらい、トラブルに巻き込まれる前にきちんと対処できるようにしてほしい…これが著者・船津さんの希望でもある。

文=塩谷郁子