「電気ケトルってエロいよな」高校生が繰り広げる、超くだらない会話劇がおもしろい件

マンガ

公開日:2016/7/15

『高校の日常』(ハードボイルドよし子/KADOKAWA)

 時々、街中ではしゃいでいる高校生を目にする。どうでもいいようなことで騒いでいる彼らを見ると、「くだらないな……」と思う反面、とてもうらやましい気持ちにもなる。それはなぜか。きっと彼らの姿に、当時の自分を重ねてしまうからだろう。振り返ってみれば、高校生の頃は誰だって些細なことで笑い転げ、友人たちとふざけ合い、バカバカしいことに夢中になっていたのではないか。しかし、成長するにともない、そんな無邪気さは影を潜めていく。それが、大人になるということなのだろう。

 ここで若干センチメンタルな気持ちを覚えた人に読んでもらいたい一冊がある。『高校の日常』(ハードボイルドよし子/KADOKAWA)。本作は、高校生たちのくだらないやり取りを題材にしたマンガで、発売当初から人気を集め、たちまち重版に。そして先日、待望の第2巻も発売された。本作はまさに「くだらない……」ネタのオンパレード。しかし、読み進めていく内に、高校生時代に戻ったかのような錯覚を覚えてしまうのだ。

 たとえば、主要人物である名護と橘のとあるやり取りを紹介しよう。

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名護「電気ケトルってエロいよな」
橘「いきなり何言ってんだ」
名護「正直興奮がおさまらねーよ…」
橘「お前 頭おかしいんじゃねーの?」
名護「おいコラ! ダチとは言え失礼だろうが」
橘「悪い…」

橘「お頭のお調子がお悪いんじゃないですか…?」
名護「言い方の話じゃねぇよ」

 ……まったく中身がない会話である。けれど、こういったくだらないやり取りで盛り上がった覚えは、確かにある。本作では、こんな会話劇が至るところで繰り広げられるのだ。

 登場するのは、全部で5組の名(?)コンビたち。物を女の子にたとえて妄想を語り合う、名護×橘。口が悪いお嬢様と暴力ギャルである、草加×照井。腐女子妄想の被害者とムッツリな女子の組み合わせ、氷川×後藤。オツムの弱いヤンキーペア、秋山×桜井。そして、不謹慎な教師と新任の部下である、仁藤×加賀美。このように非常に個性豊かなキャラクターが登場し、物語を彩っていく。全方位をカバーするようなキャラクター造形なので、きっと昔の自分に近い存在がいるだろう。それも、本作の魅力の一つだ。

 エロい妄想を延々と語る、勘違いから会話が行き違う、あえてツッコミ待ちのボケを繰り出す、シュールで意味のないトークで盛り上がる……。大人になり、こういった日常から縁遠くなってしまった人は、ぜひ本作を手に取ってみてほしい。ページのどこかに、在りし日の自分が見つけられるはずだから。

文=五十嵐 大