家事は仕事と捉えよう! 仕事でできることを家事に持ち込めば、男の家事はうまくいく

暮らし

公開日:2016/7/30

『男の家事』(五藤隆介/秀和システム)

「私のほうが大変なのよ!」
「いや、俺のほうが、仕事も忙しいし大変だって!」

 口にはしないまでも、常に心に隠し持っている夫婦の本音だろう。夫婦共働き(+幼児2人)の我が家においても、夫婦のどっちが大変なんだ?問題は、常に何らかの火種であり続けている(ような気がする)。

 一般家庭の家事とは、自分がしていること以外は全て相手がやっているというのが常態だろう。その現実の元に、件の家事分担問題が噴出してくる。朝の出勤時のゴミ捨ては家事に入るのか? 自分のネット通販アカウントで、生活用品をポチるのは家事に含まれるのか? 夫婦間の解釈には大きなズレが生じているはずだ。

advertisement

 夫婦お互いの気分を害さずに、家事を協力し合っていく方法を教えてくれるのが『男の家事』(五藤隆介/秀和システム)だ。『理系の料理』(秀和システム)の著者でもある五藤氏が、自身の家庭で行っている家事分担の方法を開陳している。『男の家事』と謳っている通り、妻が家事を手伝われる側で、夫が手伝う側という前提に立っている本書だが、もちろん逆の立場のケース、完全に対等というケースであっても、役立つ話が多いだろう。

 本書では、家事を夫婦で円満に分担するポイントを「コミュニケーション」と「文書化」だと述べている。

夫婦は他人、「作戦会議タイム」でコミュニケーション

 そもそも夫婦とは他人。持っている常識だって違う。だから、コミュニケーションをとることは大切だ。

「夫婦なのだから、口にしなくても分かりあえるはず」という甘えをお互いに捨ててみること。

 五藤氏はこのように述べている。五藤家では、週に1回30分程度、「作戦会議タイム」なる時間を設け、家事や家族の生活や予定などを話し合うようにしている。そう、わざわざ会議をするのだ。議事録を残し(五藤家の場合はSlackを使うのだという)、次の会議で進捗を確認…。もはや、仕事である。

 時間管理にせよ、タスクの管理にせよ、仕事ならできるのに、家事だとさっぱり…、という人も少なくないだろう。五藤家は仕事だったらできることを家事に持ち込んでいるだけなのだ。

家事は煩雑、だから文書化して整理しよう

 コミュニケーションの場を設けるとともに、管理シートや管理ツールを導入する。ひたすら記録、文書にすることで、家事に対するルールや解釈が整い、より良い家事分担が実現する。

 五藤氏の場合、まずは煩雑な家事を、細かく分解していった。「ゴミ出し」すらも以下のようにバラバラにされる。

〈五藤家のゴミ出しワークフロー〉(本書より一部抜粋)
ゴミの収集日とルールを確認・理解する
家庭内のゴミ箱の置き場所と用途を把握する
毎朝、各ゴミ箱の空き容量をチェックする
 → もしも満杯だったら
 → → 袋の口をとじ、一時的なゴミ置き場に退避する
 → → → 代わりの袋の在庫を確認する
 → → → → もしも残量が2枚以下なら
(中略)
回収日がきたら
 → もしも回収日=生ゴミの日なら
 → → 妻にまだゴミが出る可能性があるか確認する
(中略)
代わりの袋をゴミ箱にセットする
まとめたゴミ袋をゴミ置き場まで移動する

…、正直狂気すら感じてしまう。これは「人生を可能な限り記録する」ことを信条とする五藤家ならでは沙汰としか言いようがない。が、どうだろう? 「ゴミ捨て」を担当する男性諸氏は最後の「ゴミ袋をゴミ置き場まで移動する」ことが「ゴミ捨て」になってはいないだろうか? 実際、著者自身もそういう認識だったのだ。それが、家事を細かく分解し、妻と「ゴミ捨て」に関する解釈をすり合わせることで、一連の家事を「ゴミ捨て」と捉えられるようになったのである。

 わざわざ家庭内で会議の時間をとったり、文書にまとめたり…、面倒と思う人も多いだろう。著者はそんな声に、「これが仕事だったらどうでしょうか?」と問う。いささか、突き放された感じもするが、「作戦会議タイムはまずは月に1回くらいから始めてみては」とも。ともあれ、家事は仕事と思う、まずはこの心持ちで取り組みたいものだ。

文=村田智博