LGBTへの配慮はどうすればいい? ともに生きるために大切なこと

社会

更新日:2016/8/18

『にじ色の本棚』(原ミナ汰、土肥いつき:編著/三一書房)

 2013年に、東京都文京区において「男女平等参画推進条例」の中で性的指向・性自認に言及され、同年には大阪市淀川区が「LGBT支援宣言」を出し、そして2015年には、東京都世田谷区で区長権限による同性パートナーを認める宣誓が発表された――。LGBT、つまり性的マイノリティに対して、社会は少しずつ受け入れる姿勢を取り始めている。だが、世間におけるマイノリティへの理解・支援が万全と呼べるほどに行き届いているかというと、これは少し首をかしげざるを得ない。だが先述したように、社会では様々な取り組みが始まっており、それに伴って世間のLGBTに対する意識も高まってきている。それではなぜ世間におけるマイノリティへの理解・支援が万全と呼べる状態になかなかならないのだろうか? その答えの1つは、理解・支援をしたいという気持ちがあっても、それを実行に移す為の知識がないからではないだろうか。『にじ色の本棚』(原ミナ汰、土肥いつき:編著/三一書房)では、そういった(LGBTについて理解を深めたい・どのように支援すれば良いのかを知りたい)という人にとって役立つ本を紹介している。言うなれば、LGBTに関する知識の入り口となるのが本書である。

 そもそも、LGBTがマイノリティとされるのはなぜだろう? 無論、その絶対数がマジョリティである異性愛者よりも少ないからなのだが、それだけならば単に数の問題に過ぎない。問題は、LGBTに属しているが故に受けられない社会制度があるという事だ。こういった社会制度の硬直性が、マイノリティに属するが故の苦悩を増やしている事実は否めない。同性婚などはその最たるものだろう。近年度々議論の俎上に載るものの、未だ実施段階にはいたっていない同性婚だが、この制度がない事自体が同性愛者を始めとする様々なマイノリティから好きな相手と結婚する権利を奪っている事になってしまう。本書の中には「権利ってなんだろう?」という問いがある。例えば、マジョリティが持っている権利が100で、マイノリティが持っている権利が60だとして、ではマジョリティの権利のうち20をマイノリティに渡してお互いに80:80の平等にしようと言うと「いやだな」と思う人が居るかもしれない。また「マイノリティはマイノリティであるが故に優遇され、特権を得ているような節がある」と言う人も居るかもしれない。だが、そもそも権利とはパイやカードのように分け与えるものではない。マジョリティの権利を減らしてマイノリティの権利を増やすのではなく、マイノリティの権利をマジョリティと同じレベルまであげようと、今の社会はそう言い始めているのだ。「マイノリティ故の特権が~」などと言う人は、そもそもマイノリティが元居た場所が、マジョリティのそれよりも遥かに低い場所だったという事を思い出してほしい。今は、その場所から当事者達をなんとか引き上げよう、当事者達もなんとか上って行こうとしている時期なのだ。その為の試行錯誤を特権と呼んで非難してしまうのは、些か気が早いのではないだろうか。

 LGBTを始めとする性的マイノリティは、実に多様かつ複雑であり、その全てを把握する事は、はっきり言って困難だと言わざるを得ない。だが、何も全てを知り、また理解しようとしなくても良いのだ。貴方がLGBTについて学ぼうとしたとして、そう思ったきっかけは何だろうか。家族友人など身近な者に当事者が居るという事であれば、まずその人と話し合う事が何よりも肝要だ。何をどのようにしてほしいか、それを一番よくわかっている当事者と話せる立場にあるなら、それを活用しない手はない。また、身近にそういう人が居るわけではないけれど、興味があるから調べたいというのであれば、本書を始め色々な書籍やインターネットのHPを見回るのが良いだろう。先にも言ったが、性的マイノリティは様々であり、その全てを把握する事は困難である。だからと言って、当事者達への配慮まで難しく捉えられて、遠ざけられるようではそれこそ本末転倒である。何も難しく考えなくて良いのではないか。その人が属するカテゴリーに基づいて「この人は○○だからこうだ」という固定観念にとらわれずに「この人はこういう人なんだ」と一人の人間として尊重する事が、何よりもの配慮になると言えるだろう。

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文=柚兎