「やればできる」って何? アンチポジティブ教が本当に頑張れる“意外”な名言集

暮らし

公開日:2016/8/23

 生きていれば、悩みは尽きないもの。考えすぎて負のスパイラルに陥ってしまった時、言葉の力に救いを求める人も多いだろう。「やればできる」「前向きに行こう」「がんばれ」…。巷にはポジティブな励ましの言葉が溢れている。でも実際は、落ち込んでいる時にそんな言葉をかけられたり目にしたりして、ウンザリした経験がある人は多いのではないだろうか。私たちは疲れすぎていて、ストレートな励ましの言葉は時に苦しい。

 そんなポジティブな言葉ではがんばれないという人に『「がんばれ!」でがんばれない人のための“意外”な名言集』(大山くまお/ワニブックス)がある。本の帯にはデカデカと、「聞き飽きた言葉で一歩踏み出せますか!? 」とあるが、著者はけしてポジティブな名言を否定しているわけではない。「つらい人にそっと寄り添いながら、前向きになれる新しい視点や考え方を提供できる」ただそんな本を作りたかったと言う。面白いのは、偉人や成功者だけでなく、意外なあの人の名言が悩みのタイプ別に紹介されているところだ。

 たとえば、イヤなことばかり起こって自分は不幸だと思ってしまう人には、「やまない雨はないとかじゃなくて今降ってるこの雨がもう耐えられないっつってんの」。アニメ・イラスト作家の谷口崇さんがツイッターに投稿したこの言葉は、1カ月ほどで2万4000回以上リツイートされたとのこと。励ましの言葉をくれるより、今この瞬間を救ってほしいと思っている人は、思わず頷いてしまうだろう。

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 人に足を引っ張られて困っている人には、「いじわるされるたびにしんせつにしてやったらどうだろう」。いつも意地悪をしてくるジャイアンに対して、ドラえもんがのび太くんに提案した言葉だ。悪意を持って意地悪をした相手に親切にされたら、大抵の人は戸惑って我が身を振り返るはず、という深い意味がある。ドラえもん、侮れない。

 ふられてばかりいる人には、「今までに、私をフッてくれた人たち、ありがとう。おかげでこの息子(こ)に会えました」。これは『日本一短い手紙 大切ないのち』に掲載された、愛知県の主婦である木次洋子さんの言葉。もし木次さんがフラれた男性の誰かとうまくいっていたら、現在の最愛の息子は誕生しなかったはず。どんな大失恋も巡り会うべき人に出会うまでの必要な過程だと考えれば、痛手から早く立ち直れそうな気がする。

 ポジティブな言葉ではがんばれない人も、本書でなら心に染みる言葉を見つけられるのではないだろうか。ちなみに、秘書アプリSiriに「もう疲れたよ」と弱音を吐くと、こう答えてくれるそうだ。

「無理しないで少し休んでください。私はここで待ってますから」

 へとへとに疲れた時、実はこんな言葉が一番嬉しいもの。次はあなたが、意外な誰かに励まされる番かもしれない。

文=佐藤結衣