サンドウィッチマンと考える「今年心に響いた言葉」

芸能

更新日:2011/12/19

 3月11日に起こった震災以来、世界中から「祈りの言葉」が届けられている。メッセンジャーとして“被災地のいま”を伝え続けている サンドウィッチマンに、今年もっとも心に残った本を聞いてみた。

伊達:僕は、断然これですね。『ラグビー黄金時代大事典』。

富澤:どのあたりが良かったの?

伊達:2019年のラグビーW杯は日本で開催されるんですけど、松尾さんはラグビーの聖地である釜石市でぜひやろう! と運動してるんですよ。でね、対談のなかで「今、日本は大きなケガをしている状態だと思うけど、例えば右の肩を大ケガしたからって、身体を動かさないで休んでるだけじゃダメ」と言ってるんです。「右肩が使えなくても、左肩は鍛えられる。右足左足が動かせる。そうしていれば、ケガをしていた右肩が治ったとき、もっと強い人間になれる」って。これ、なるほどなって思ったんです。立ち止まっちゃ、いけないんだよなって。

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富澤:たしかにいい言葉だけど、今年いちばんの本に『ラグビー黄金時代大事典』を選ぶって、言葉が見つからないよ。

伊達:いいんだよ! いい話してんだから。お前はなに選んだんだよ。

富澤:ゲバラ本を。

伊達:『元気が出るゲバラ語録』……こんなの読んでたんだ。ゲバラってどういう人なの?

富澤:キューバを革命で独立させた人。ちょいちょい読み返していて、そのたびに心に引っかかる言葉は違うんですけど。震災後に読み返したときは、この言葉が印象的で。「われわれは、歴史と向かいあっている。恐れるな! これからも、いままでと同じ熱意と信念を持ち続けなければならない」。いま、自分たちは、復興っていうこれからの歴史になっていくなかにいるんだな、って思ったんです。これまでは読んでても、ちっともピンとこない言葉だったんですけどね。

──言葉からたくさん元気をもらえることもありますが、一方で、言葉の無力さを感じることもあったのではないかと思うんですが。

伊達:(震災直後は)芸人として活動してなかったですからね。

富澤:震災後、僕自身も笑うことができなかったんです。はじめて笑ったのは、高田文夫さんがラジオにゲストで呼んでくださったとき。

伊達:文夫さんが、すごくふざけるんです。「おまえら、津波から逃げてきたんだよな」みたいな(笑)。

富澤:クレームもたくさんきたらしいです(笑)。でも、あえて暗くならないように気を遣ってくれていたんだと、よくわかりました。で、つられて笑って。じゃあ気持ちが少し楽になったんです。笑うことってすごく効果のある薬なんだって、はじめて知ったというか。娯楽なんてものはなくても生きていけるものなんだけど、でも、すごく必要なものなんだなって。笑ったからって何が変わるわけでもない。でも、一瞬でも気分転換になってくれたらって、ようやく思えてきたかな。

伊達:笑いは言葉を扱う仕事。言葉だけで、どれだけ想像を掻き立てて、面白い! って思ってもらえるかどうか。わーって笑える一瞬をつくれるかどうか。それくらいしか僕らはできないですから。あともうひとつは、伝える役。あの日に、宮城県気仙沼市の海沿いでロケをし、あの場所に居合わせたというのは、なんかあるんだな、とは思うんです。偶然といえば偶然なんですけど……。

富澤:必然とも言えないですけど……。ただ、僕らの名前は“サンドウィッチマン”ですから、人々に知らせる役目があるのかもしれないですよね。

■富澤たけしが選んだ1冊
『元気が出るゲバラ語録』 知的好奇心研究会/編 リイド文庫 500円
キューバ共産主義革命に尽力したチェ・ゲバラの生き様を、彼が遺した言葉から見つけ、紹介する一冊。自分を奮い立たせるための力強い言葉、示唆に富んだ言葉など、人を惹きつけてやまないゲバラの人間的魅力が満載。

■伊達みきおが選んだ1冊
『ラグビー黄金時代大事典 ~松尾・平尾時代から世界ラグビーまで~』 ラグビー魂編集部/編 白夜書房 1600円
過去約30年間の日本&世界のラグビーを100のテーマで振り返ったムック本。伊達さんオススメの対談以外にも、伝説的選手の紹介やナショナルチーム、ポジションの解説など、ラグビー初心者も「なるほど」な一冊。

(ダ・ヴィンチ1月号 「BOOK OF THE YEAR」より)