『プレバト! ! 』で俳句ブーム到来? 毒舌・夏井いつき先生が教える“才能アリ”な俳句の作り方

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/13

『夏井いつきの超カンタン! 俳句塾』(夏井いつき/世界文化社)

TBS系バラエティ番組『プレバト! !』の俳句コーナーが話題を集めている。毎回出されるお題に沿って作られた芸能人の俳句を、俳人・夏井いつき先生が“才能アリ”か “凡人”か、はたまた“才能ナシ”か査定する。大御所俳優、アイドル、芸人など、誰に対しても変わらない歯に衣着せぬ物言いが気持ちいい。夏井先生がどう評価するのか、どんな言葉を発するのか、テレビを見ている方は期待し見入ってしまう。そして、本人が自信を持っているときほど、バッサリ切り捨てられてしまう様子がおかしくてハマってしまうのだ。

番組で毒舌を披露する夏井先生だが、実際のところ芸能人たちが作る俳句をどう見ているのだろうか。『夏井いつきの超カンタン! 俳句塾』(夏井いつき/世界文化社)によれば、「はじめはあまりのヘタさに困惑するばかりでした」と、やっぱり毒舌を披露せざるを得なかったようだ。だが、「何とか俳句に仕立てようと格闘を続けているうちに、私の中でも俳句のメカニズムが整理されてきたことは大きな収穫」と語る。変わらぬ毒舌はともによりよい俳句を作ろうとする者への愛かもしれない。

さて、番組を見て自分も夏井先生の査定に挑戦してみたいと、俳句に興味を持った人は多いのではないだろうか。そこで、本書で夏井先生が教える俳句作りのポイントを一部紹介しよう。

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いわずもがなの「五七五」

当たり前だが、俳句は五七五の十七音で構成される。「字余り」「字足らず」もあるが、中の七音ではこれをやらないのが定石。調べが整わないらしい。また、五七五の間を一字ずつあけず、一行で縦書きにするのが原則。案外知らないことが多くてびっくり。

「季語」をひとつ入れる

「これも当然知ってるよ!」と言いたいところだが、『プレバト! !』の出演者も「季語が入ってない」「季語が二つ入っている」と、よく夏井先生に指摘を受けている。季語の大辞典『歳時記』とお友達になるべし。

初心者におすすめの「取り合わせ」

この季語を通して俳句の作り方を大別すると、「一物仕立て(いちぶつじたて)」と「取り合わせ」の二つの方法があるという。「一物仕立て(いちぶつじたて)」は季語のことだけで一句を構成する作り方で、例えば次の通り。

紅梅や枝々は空奪ひあひ
鷹羽 狩行(たかは しゅぎょう)

これまでにない新しい発見や視点から表現しないと、ありきたりで面白みのない句にしかならないらしい。というわけで、初心者におすすめされているのは「取り合わせ」。

白梅や父に未完の日暮あり
櫂 未知子(かい みちこ)

ある季語に、それと一見関係のない季語以外の言葉を組み合わせる作り方。上記の句の場合は、白梅の咲き始める早春の頃、人生の日暮れを見ることなくこの世を去った父を詠んでいる。作り方は、まず季語とは関係のない十二音のフレーズを考える。このとき、その中に季語を入れないように注意。それから、十二音に合うイメージの季語をつけ加える。なるほど、季語をちゃんと入れなければと思うとごちゃごちゃ考えそうだが、これならできるかも。

夏井先生によると、大切なのは日常の何気ない物事から十二音のフレーズとなる「俳句の種」を見つけること。日頃からアンテナを張って、気がついたら書き留めておくように提案する。そして、なぜそれが自分の関心を引いたのか、理由を考えてみるといいようだ。

俳句のよいところは、なんといっても日本語を知る人なら誰でも簡単に詠める点。作文や論文のように長い文章が求められているわけではない。上手いか下手かはともかく、たった十七音で思いを表現できる。本書に収録された夏井先生と脳科学者・茂木健一郎氏との対談で、夏井先生は、辛い出来事に出会ったときその経験を俳句の材料として捉えられ、「物の考え方がすごく前向きになる」と語る。程度の差はあれども、生きていれば苦しい状態におかれることはいくらでもある。外に吐き出したいときには、俳句に思いの丈をぶつけてみるといいかもしれない。素敵な文学として昇華できそうだ。

本書の後半では「仕事」をテーマに募集された俳句が掲載され、夏井先生が添削している。そこで、夏井先生が教えてくれた俳句の作り方を参考に、恥ずかしながら筆者も今の気持ちをぶつけてみたい。

夏の夕犬連れ涼む締め切り日    林 らいみ

うむ、我ながら現状をなかなかうまく表していると思う。編集部のみなさま、すみません。

文=林らいみ