マウンティング男子より切ない? 飲食店で見かける「イヲカル女子」

エンタメ

公開日:2016/8/27

 先日の「女子より深刻…! 飲食店で見かける「マウンティング男子」の切なさ」で、「この頃、飲食店で見かけるもの」に「『マウンティング男子』や『イヲカル女子』がやたらと多い」、「社会性の男子、社交性の女子」と書いた。

 

 男性はポジションが社会的に固定化されやすい。転職でも大きく階層をひっくり返すのは難しいし、起業環境はまだ厳しい。そして結婚で人生のステージが大きく変わることも少ない。男性は「社会的な生き物」であり、社会に支配されることを自覚しやすい。だからこそ「まるで海原、あたかも雄山」かのような有形無形の示威行動で自らのポジションを上位に規定したがる。

advertisement

 

 一方の女性については、紙幅もあって(紙ではないが)「イヲカル女子」という名称にとどめたが、飲食店で居合わせたとき、微妙な気持ちになるのは「マウンティング男子」と同じだ。ちなみに「イヲカル女子」とは、「(虎の)威を借る女子」のこと。世の中やコミュニティで価値のある人間を引き合いに出しては「私もその階層にいるのよ」と無言でアピールする女子である。アピールのパターンはだいたい以下のとおり(一部、組み合わせるケースあり)。

 

その1 コミュニティのリーダーと仲良しアピール
 圧倒的に多いのがこのパターン。自分の所属するコミュニティのリーダーや人気者といかに仲がいいかを内外に向けてアピールする。リーダーとの食事会にはマメに顔を出し、隣の席を確保。ついでに自分がいかに有能か、コミュニティに貢献しているかを後ろの席の我々にも丸聞こえなデシベルで喧伝する。店や周囲からたしなめられても気にしない。リーダーから注意された場合のみ、「あ、すみませ~ん! テヘペロ!」と一瞬おとなしくなるが、ほどなく再起動し、仲良し自慢コマンドが次々に出力される。ターゲットになるのはコミュニティのリーダー格のほか、自分が勤める会社の役員や親会社の要人など。そのほかタレントや有名人など日常を飛び越えた相手との仲良しアピールも聞こえてくるが、盛りすぎて話が破綻しているケースも散見される。

 

その2 ライバル的な女子への陰口
 前項にもあるように「イヲカル」ためには自分より上位レイヤーの人と仲良くしておく必要がある。つまりときには同格風情のライバルを排除することもいとわない。何をするか。行動はシンプルだ。キーマンにそっと寄り添い、陰口を耳打ちする。もっともリーダーや人気者から「陰口を言う人」だとみなされ、評価を下げるのは避けたい。「やり過ぎ厳禁」を心に秘めて、その会合を泳ぎ切る。「まあレベルが違うからいいんだけど」なら、スルーすればいいのにスルーできないのが、イヲカル女子の業の深さか。隣卓の身としては、さほどうるさくないのはいいが、ヒソヒソ話している雰囲気がムズムズする。

 

その3 リア充アピール
 この場合のリアルは決して異性関係とは限らない。むしろ同性受けなどを考えて、「大きな仕事に携わった」という自己礼賛パターンや「誘われて、予約の取れない店で事をした」「友達のタワーマンションで花火を見ながらパーティをした」など、自分の力だけでは獲得できないコンテンツの「イヲカル」ことも。

 

 それにしても、つくづく女性とモテる男たちはすごい。彼らは笑いどころも、興味深い事実もない「イヲカル女子」の話を興味のありそうな表情で聞くことができる。それが大人のたしなみなのだろうが、修行の足りない身としては「へー。すごいね」(棒)というダメなあいづちしか打てそうにない。ああ、情けない。まるで野比、あたかものび太である。

 

文=citrus松浦達也