愛する我が子を殺したのは私ですか―? けっして他人事ではない、どこにでもある家族の光と闇

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/13

 「息子を殺したのは私ですか?」。“子育て”をテーマに圧倒的なリアリティで描かれた、椰月美椰月(やづき)美智子の最新作『明日の食卓』が2016年8月31日(水)に発売された。

 これは試練なのだと思う。乗り越えてこそ、本当の家族になっていくのだ――。それぞれ静岡、神奈川、大阪で暮らし、「石橋」という名字を持つ3人の母親たち。何の関係もない彼女らに共通するのは、「ユウ」という名前の小学校三年生の息子を育てていること。幸せだったはずの家庭が、些細なことがきっかけで崩れはじめる。無意識に子どもに向いてしまう苛立ち。3つの石橋家の行き着く果ては……。

 実際に小学生の男の子2人を持つ著者自身の体験を元に、我が子を愛おしく思う一方、孤軍奮闘しつつも追いつめられていく母親の姿が、リアルに描かれている。どの家庭でも日常の一歩先に起こりうる衝撃の結末に、思わず考えさせられるはずだ。

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「ラストを書きながら、涙があふれて仕方がなかったです」何があっても子どもに暴力をふるってはいけないという世の中ですが、制御不可能な男児二人の子育てをしていると、どうしても手が出てしまうことがあります。もちろん、子どもに手をあげるのはいけないことですが、感情が先走ってしまうこともあると思うのです。そんなふうに感じたのが本作執筆のきっかけです。怒りの感情に任せて取り返しのつかないことになったとしても、時間は取り戻せません……。“一歩間違えたら、自分も同じだったかもしれない”と感じるお母さんも少なからずいると思います。私はまさにそうでした。ラストを書きながら、涙があふれて仕方がなかったです椰月美智子

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 けっして他人事ではない、どこにでもある家族の光と闇。早くも多くの人から共感の声が上がり、話題になっている。本読みのプロや読者からも感想コメントが届いており、その一部を紹介しよう。

暴力の衝動は、きっと誰の中にも潜んでいる。そこから目を逸らさず書き切った、深い勇気を讃えたい宮下奈都(作家)

ミステリーを読んでいる感覚で興奮が抑えきれませんでした。子育ての様子がリアルに迫ってきました。3人の母親の生き様に一喜一憂しました。壮絶な家族の物語に涙してください大杉書店市川駅前本店・鈴木康之さん

3つの家族の幸せはどうやって崩壊していくのだろうと、急きたてられるように読みました。今この時代に子供を育てることの難しさ、そして辛さに、そっと寄り添ってくれる小説だと思います紀伊國屋書店新宿本店・今井麻夕美さん

育児は孤独です。誰かの助けが必要です。本書が一人一人の心の中にある「優しさ」に光を灯してくれることを切に願っています山下書店南行徳店・高橋佐和子さん

大丈夫、あなたはきっと大丈夫なんだとそっと手をさしのべてくれる(ラストに涙)。誰にでも起こりうる“明日は我が身”の日常に、勇気と希望を与えてくれる一冊。戸田書店掛川西郷店・高木久直さん

二児の母である私は登場するどのママにも感情移入してしまい泣けてきました。今の日本の子育ての現実です。フィクションとはいえ、たくさんのお父さんお母さんの声だと感じましたブックポート大和店・坂井真やさん

こんなにも共感した本は今までなかったかもしれません。たくさんの母親の気持ちを代弁してくれてありがとうございます。子育て頑張ります翠子さん(20代女性・子1人)

女性にとって、子供というものの存在の大切さ・愛おしさを実生活で体験し、又これまでの作品で表現してきた作者の集大成的な本作はミステリーテイストも盛り込まれていて、最後にはハッとさせられる傑作であるトラキチさん(50代男性・子2人)

衝動的な行動、信じられない行動というのは簡単だけど、自分が絶対にしないとは言い切れないんだと思い、怖くなる。それでも強く生きていく家族の幸せを願わずにいられなかった。Mayさん(30代女性)

 作品特設サイトもオープン。冒頭約40ページ分の試し読みや、作品の詳細、著者の作品に込めた思いなど、充実のコンテンツになっている。まずは、試し読みでこの衝撃の物語を楽しんでみるのもおススメだ。

⇒『明日の食卓』特設サイト

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