仕事は人との巡り合わせ―仕事に困らなくなる人脈づくりの方法

ビジネス

公開日:2016/9/8


『一生仕事に困らない! 「活きた人脈」の作り方・育て方』(加納亜季/ぱる出版)

 名刺の束は数知れず、しかし今後とも仕事の関係を継続できるパートナーはその中でもほんの一握りしかいないのではないか。今まで交換した名刺の数々に目を通し、そのように感じるのは私だけではないだろう。

 仕事は泉のように湧いて出てくるのではない。自らを売り込んで、あなたに仕事をお願いしますという形で初めて成立するもの。とはいえ、どうすれば仕事を任せてもらえる人脈を作ることができるのか。考えようにも途方に暮れてしまうのが関の山だ。

 完全歩合制のサラリーマンや起業した人、フリーランスであれば是非とも知っておきたいコミュニティ作りについて書かれているのが『一生仕事に困らない! 「活きた人脈」の作り方・育て方』(加納亜季/ぱる出版)だ。アメリカで生まれた異業種交流会BNIジャパンの運営に携わる著者が、BNIでの経験と、本業である心理学トレーナーの知識を用いての人脈づくりの方法を伝えている。

advertisement

 人脈づくりのファーストステップは、まず自分の価値を知り、それを正しく人に伝えることである、と本書では述べている。日本人は用意された仕事があれば、それに真面目に取り組む、勤勉さが武器。しかし、その武器で自分がこれまでどのような成功をおさめてきたのか、どのような成果をもたらせるのかを相手に伝えることができないという。

 確かに、出会ったばかりの相手に「自分はこんなことができる」と相手に言うことは気が引けてしまいそうだが、著者は「堂々と主張するべき。そうすることで、仕事の幅も広がる」と主張する。

 もちろん、ただ一方的に自分の能力について話すだけでは意味がない。新しい出会いを仕事につながる信頼関係に発展させるには「自分の強み」と「他人との違い」を明確に伝える必要がある。そのために、「自分の名前を相手の記憶を刻み込む」「お互いの距離感を縮める」「必要があったときに思い出してもらう」という3つの要素を自己紹介に盛り込むことが大切で、具体的なアドバイスとしては、自己紹介の短い時間の中で「固有名詞」「数字」「自分が得意な分野の特質・特徴」を入れるとよいそう。

 初めの自己紹介で自分のことを相手に印象づけた。だからといって、それだけで信頼関係は生まれない。さらに会話をして相手のことをより知っていく中で信頼は生まれるものだ。

 口べたな人には「似た者同士の法則」がいいだろう。出身校や出身地、好きなスポーツなど、話し相手との共通点を3つ見つける。共通点が見つかると話しやすく、親近感も湧きやすいそう。簡単なことかもしれないが、このような積み重ねが相互理解を深めるのだ。

 他にも本書では、「お互いさま」という精神が肝要であると述べている。つまり、与えられるのであれば、自らも周囲に与えるという考え方が大切だということだ。自分だけが利益を得ようとする人は、初めは上手くいくかもしれないが、自己中心的に物事を考える人は周囲にそれが伝わってくるし、やがて遠ざけられる。だんだんと頼れる人間がいなくなってしまうだろう。

 正直、この本を読む前は、簡単に仕事が生まれるような人脈ができるのであれば、こんなにうれしいことはない、と考えていた。だが、そういった利己的で人任せな発想が、逆に仕事を減らしてしまうということに気が付かされた。仕事とは人と人との関わりであり、信頼関係である。どの世界でも、そこを疎かにする人に仕事ができる人なんていない。そう、私も含めて。

文=布施貴広(Office Ti+)